コンピュータによる価値判断

今から遥か昔、我が家にSHARPのパソコン、MZ-80Bがありました。(モノとしては過去形ではなく、実家にまだあります。もう30年近く電源を入れてないとは思いますが)

写真は wikipedia より借用

運命の分岐点

OSがROMではなく、カセットローディングだったこともあり、何をするにしても、面倒なカセット装着とカウンターを見ながらの頭出し(いま思えば、これ、めちゃくちゃ死語ですね)。

当時は小学生だったので、プログラムを自分で作成するということは無かったんですが、月刊誌等にBASICのソースコードが載っていて、それを入力して実行するというのは、やってました。BASICの行番号とか、懐かしいですね。

まぁ、そのころに分岐処理って何?とか、サブルーチンって何だ?とか、プログラミング言語の基礎的なところを理解し始めていたのかもしれません。

行番号は手で入力するものだと思っていたので、後年、初めて行番号の無いC言語に触れたときに驚いたことを憶えています。刷り込みとは恐ろしいものです。

それはともかく、とある雑誌だったと思うのですが、「価値判断」というソフトが掲載されていました。

ものごとを決めるのに、その判断の手助けをしてくれる、というものです。

価値判断とは

以下、はっきりとした記憶が残っていないので推測も混じりますが、

  1. 判断対象の入力(複数個)
  2. 判断したい基準の入力(複数個)
  3. 判断基準の重み付け入力
  4. 各判断対象に対してのそれぞれの判断基準での採点入力(100点満点だったか10点満点だったか)
  5. 判断結果の表示

のような流れだったと思います。

例えば、旅行先を北海道にするか東北にするか、九州にするかを決めたいとします。
そうすると、判断の対象は「北海道」と「東北」「九州」になります。(実際には「ホッカイドウ」「トウホク」「キュウシュウ」ですけどね。漢字ROMなんて無かったですし)

次に、判断基準を入力します。ここの記憶が曖昧なんですが、「費用」「乗り物」「食べ物」「温泉」その他諸々。というような感じでしたでしょうか。乗り物での満足度、食べ物での満足度…のような感じです。

判断基準を決めたら、それぞれの「重み」を入力します。これは10段階くらいでの重み付けだったような気がします。

どの項目を重視するか、ということですね。

楽しめたら費用は度外視(完全無視なら項目には入れないですが)とか、やっぱり温泉の質は条件から外せない、とか。

これらの入力が終わったら、いよいよ採点。

判断基準「費用」に対して、「北海道」「東北」「九州」の各ポイントを入力します。高い方が良い、というお金持ちではないので、安い方がポイントは高くなります。関西が出発点なら九州のポイントが高くなりますね。

「乗り物」は、個人的にディーゼル特急好きなので北海道のポイントが高いです。九州の観光列車も魅力的ですけどね。

「食べ物」は、「温泉」は…、とそれぞれに入力を終えると、入力ポイントに重みを掛けた総合得点が出てきます。

まぁ、判断基準の重み付けも、各項目の採点も自分でするので、結果表示の前に、ほぼほぼ答えはわかってるようなもんですけどね。でも、「コンピュータによる価値判断」みたいな面白さがありました。

入力は恣意的に

まだパソコンが珍しかった時代ですから、クラスメイトが自宅に遊びに来て、パソコンを触ることもしばしば。

高学年だと「価値判断」くらいは出来るので、リーダー的な子が「クラスの女子を比べてみようぜ」みたいな。
「明るさ」とか「可愛さ」とか。今思えば失礼なことを、男子ばかりでやってましたね。

でも、採点の段で、それぞれの男子が、対象の女の子をどういう風に思っているかがわかって、それが楽しかったりもしました。

出てきた結果に「さすがはコンピュータの判断」みたいなノリでしたが、完全に恣意的な結果ですからね。AIでも何でもなく、それぞれの思いが点になって表れただけですから。

未来に活かす

価値判断のソフトで遊んでいた時代、シミュレーションやAIなどとは無縁のデータ処理技術しかなかったわけですから、判断を下すのは結局、人間でした。

それがAIによる解析が普通になってきて、膨大な情報ソースがあれば、正確な答えが出せる時代になってきています。

膨大な論文から新型コロナウイルスに対するワクチンの効果を予測したり、スーパーコンピューター富岳で感染者から発せられた飛沫の漂う状況をシミュレーションしたり。

残念ながら、こういう時代であっても、多くの人が感染し、多くの方が命を落としています。

8bitマシンのMZ-80Bが活躍していた時代。フロアを埋め尽くすような大型コンピューターでも、今のスマホ搭載のCPU性能に及ばなかったのではないかと思います。この時代に新型コロナウイルスが蔓延していたら、どうなっていたでしょうね。

人命優先か、経済優先か。日本国の進むべき施策が、この「価値判断」ソフトで決められることは無かったでしょうが、人が手で集めた資料を基に、人が判断するしかなかったと思います。そう思うと、多くのデータが蓄積され、あらゆる面から情報を解析できる今の時代は素晴らしい時代だと思います。

これからも、技術の進歩が、より多くの尊い命を救ってもらえることを期待しています。