14系 急行「能登」(2)  EF62牽引

14系 急行「能登」とEF62形電気機関車

14系時代の急行「能登」。

国鉄時代の1982(昭和57)年11月改正で、それまでの10系寝台車+旧客座席車(スハ43系)編成から、14系寝台車+14系座席車に姿を変えて登場しましたが、同時に上越線経由から信越本線経由へと変更になったことから、実質的には、同改正で廃止となった信越本線経由で上野-福井間を、同じく10系寝台車+旧客座席車の編成で走っていた急行「越前」の名称変更+区間変更(福井発着→金沢発着)と言っても良いかと思います。

いずれにしても、信越本線を走る客車急行となったことから、EF62での牽引が必要となったわけで、14系「能登」を走らせるには、手に入れたい機関車、ということになります。

TOMIXの「JR 14系客車(能登)セット」を購入するにあたって、当然のようにEF62形電気機関車も予約していて同時に配送されていたのですが、時間の都合もあってEF62の準備時間が取れず、とりあえず14系車両の見栄えを整えて、EF81で牽引する、という暫定対応となっていました。

そんなわけで、今回は、EF62での牽引をすべく、準備を進めたいと思います。

EF62形電気機関車

登場の背景

大阪に住む私にとって、EF62形電気機関車は、それほど馴染みがありません。

それもそのはずで、元々は信越本線の碓氷峠越え区間を直通する列車の牽引用に開発された、特殊用途の機関車でした。1962(昭和37)年に先行試作車のEF62-1が完成したそうです。1962年にEF62が誕生した、ということですね。

今から63年前の話です。EF62の62、じゃなくて63年前、というのがちょっと残念ですが、そんなのはどうでもいいですね。

その翌年1963(昭和38)年以降、量産車53両が製造されました。先行試作車と合わせて54両です。ですので、EF62-54がラストナンバーということになります。

それまで、碓氷峠はアプト式のED42での牽引でしたが、出力が低いことから牽引する1列車当たりの重量が低く抑えられ、しかも速度が非常に遅い(ラック運転での設計最高速度は18km/hだったそうです)上に、この区間が単線であったことから、首都圏-長野間でのネックとなっていたわけです。

そこで、横川-軽井沢間を複線化の上、通常レールとすることで、この碓氷峠を含む前後区間を直通して牽引できる機関車の開発が求められた、ということです。

そこで誕生したのがこのEF62です。

もちろん、皆さんご存じの通り、EF62牽引だけでは碓井峠は越えられず、峠のシェルパことEF63が峠の下側で支えているわけですが、EF63と強調運転するのがどんな機関車でもいいわけでは無く、EF63と強調運転するため、また、碓氷峠を越えるためのいろいろな対策が行われたのがEF62というわけです。

見た目の話としてはEF63と強調運転することから、それまでのEF60、EF61には無い貫通扉が設けられました。

それに、EF63と強調運転することから機器が共通化されていて、さらにはEF63との協調運転用にジャンパ連結器が備えられています。

碓氷峠対策だけでは無く、碓氷峠区間以外の信越本線が2級線であったことから1軸あたりの荷重(軸重)を抑えるために3軸台車となっています。1級線とされた碓氷峠区間のみを走るEF63には無い対策ですね。

さらには、EF63との強調運転に欠かせない無線通信を山岳区間でも確実にするため、1990(平成2)年以降に設けられたのが、運転席前のC’アンテナ。

これらが相俟って、EF62は、他の機関車とは異なる独特の風貌となっています。

運用とその後

当初は信越本線区間である高崎-長野間のみの運用でしたが、1966(昭和41)年に直江津まで電化されると運用区間は直江津まで延び、1969(昭和44)年に宮内まで電化されると、新潟までも直通運転するようになったそうです。その前年には高崎から南、上野まで直通するようになっていたようですね。

なので、信越本線経由の客車列車と言えば、EF62牽引ということになります。14系時代の急行「能登」の上野口での再現には必須、ということです。

もっとも、客車列車は時代を進むごとに削減され、碓氷峠のEF63はともかく、EF62の旅客列車牽引の場面はどんどんと減っていきます。ですので、貨物列車の牽引が主な業務となっていきました。

とはいうものの、碓氷峠越えでの貨物重量制限から関東-北陸の貨物列車は上越線経由が主流となり、関東-長野県向けの貨物も中央本線・篠ノ井線経由へと移行したことから、1984(昭和59)年2月改正で、安中-小諸間の貨物輸送が廃止されます。そんなわけで、EF62はますます余剰化が進んでいました。

一方で東海道・山陽本線での荷物列車を牽引していたEF58の老朽化が進んでいたことから、タイミング良くというのか、電暖装置を備えたEF62が余剰となっていたことで、EF58への置き換えとして、1984(昭和59)年春に、EF62のうち26両が荷物列車牽引機として下関運転所へ移管したそうです。

ところが、移管からわずか2年半後の1986(昭和61)年11月改正で国鉄による荷物列車自体が廃止となったことから、下関へと移管した車両を含め、1987(昭和62)年4月の国鉄分割民営化でJR東日本へと引き継がれた6両を除き、全て廃車となっています。

とはいえ、その6両も、定期旅客列車としての運用としては急行「能登」のみ。間合いの貨物運用や、碓井峠を通過する臨時列車の牽引が細々とあっただけのようです。

1993(平成5)年3月改正で急行「能登」が489系電車に置き換えられると定期運用は全て消滅。その時点で2両が廃車に。

1997(平成9)年の碓氷峠区間廃止により、EF62でなければ、という理由が無くなってしまったことから順次廃車となり、1999(平成11)年に最後のEF62-54が廃車されたことで、EF62が廃形式となりました。

実車を見る

そんなEF62ですが、東海道・山陽本線を荷物列車が走っていた頃、間合いで臨時団体列車なども牽引していたそうですが、直接目撃した記憶は全くありません。つまりは、最初に書いた通り、極めて「馴染みの無い」機関車だったんです。

それを象徴するかのようではあるんですが、2010(平成22)年に「碓氷峠鉄道文化むら」を訪れた際に撮影したEF62-1(量産試作機)の写真がこちら。

EF15の後ろに、ちょこっと見えているのが、EF62-1です。他に、側面のエアーフィルターだけが写っているのとかしかなく。。

EF63の方は、しっかりと写してるんですけどね。EF62の方は、EF63の後ろにちらっと見えているだけ。。

と思ったら、ありました。

もうちょっといい場所から撮影できれば良かったんですが、無理やりフレームに収めた、という感じの写真です。

というように、そこまで興味・関心が無かった、ってことですかね。。

鉄道模型のEF62

昨年の春、EF62のユーズド商品を某有名ショップで購入したんです。

写真にもある通り、9147とラベリングされたこの商品。

TOMIX 9147は、「JR EF62形電気機関車(2次形・田端運転所)」で恐らく2015年くらいの製品かと思います。それよりももっと古い「2102 国鉄EF62形電気機関車」がまだまだユーズドで発売されていて、それらの値段よりもそこそこ高く設定されていたので、当然9147が届いたと疑うことも無かったんですが。。

封を開けてみて、「なんか古い感じがする」と裏返してみると…。

どうみても2102ですね。

もちろん、返品・返金してもらいましたが、去年の1月~3月までの購入分で、立て続けに同じような旧モデル品をつかまされて、それ以来、このショップの通販を利用するのを控えてます。

それまでは、そんなことは無かった(…わけではなく、頻度が少なかった)のですが、返品の手間を考えると利用しない方がいいかな、と。

売主が新製品を購入した際に、そのパッケージに旧車両を入れてそのまま売却。そのパッケージのラベルを信じて(中身を確認せずに)、その製品に見合う価格で販売している、というのが、ユーズドで取り扱う総数が増えたのと、目利きの人が少なくなったというのを象徴しているんでしょうね。

これが、この1年ほど、ユーズド車両を紹介してこなかった理由でもあります。

TOMIX 7194 JR EF62形電気機関車(2次形・田端運転所)

というわけで、非常に長い前置きになりましたが、TOMIXの新製品、7194「JR EF62形電気機関車(2次形・田端運転所)」です。

さっそく取り出してみましょう。

3軸台車の独特の配置ですね。

前面にプツプツ開いている穴は、ナンバープレート用が2点、前面手すり用が計4点、それに運転席下のコーナーにCアンテナ用が2点です。

写真では見えないですが、上面には信号炎管とホイッスルカバー用の穴も各1点ずつ、開けられています。

付属品

TOMIXの機関車らしく、盛りだくさんです。

左から、ナンバープレート(前面用・側面用)、メーカーズプレート、その下が列車無線アンテナと透明の「アンテナ用穴開け治具」、右に行って前面手すり、ダミーカプラー台座、ダミーカプラー×2、TNカプラー×2、その下がホイッスルカバーと信号炎管のランナー、一番下がCアンテナのランナーです。

信号炎管とCアンテナは2ヶ所の取り付けに対して、それぞれ8個(本)。

Cアンテナの真ん中にあるパーツはEF62では使用しない、ということなので、このランナーはEF63(重連セット)と共通、ってことですかね。じゃなきゃ、Cアンテナ、多すぎです。取り付けに失敗したり、紛失したりするような物でもないですし。

車番決め

選べるナンバーは、次の4つ。カッコ内はメーカーズプレートの名称です。

・EF62 41(東洋電機・汽車会社)
・EF62 43(東洋電機・汽車会社)
・EF62 46(東芝)
・EF62 54(東洋電機・汽車会社)

当然、いずれも急行「能登」牽引のため、国鉄分割民営化の際にJR東日本へと移管した車両ですので、14系急行「能登」を牽引する目的なら、どれを選んでも間違いないですね。

急行「能登」は、電車化された以降にしかリアルでは見たことがないので、EF62の車番に思い入れはなく、何となくで 43 に決めました。

ナンバープレートは、取り付け用の突起が裏側になるため、さほどきれいに切り落とす必要も無く、こんな感じで前後に揺すって切り離す、で十分です。

が、メーカーズプレートは同じように切り離すと、ちょっと脚が長めになるのか、十分にボディの奥まで入りきらない感じがします。といって、押し込んじゃったので取り外すことも出来ず、なんか「浮いた」感じです。

前回紹介した、ハセガワのTT-47。ここでも大活躍でした。

ホイッスルカバーと信号炎管

こちらも、極小パーツピッカーのおかげで、作業は非常にスムーズに。

もっと早くに(この製品は出たばっかりですが、類似のものを)手にしていれば、小さなパーツの取り付け時の印象が変わったかもしれません。

ところが。。

先端が丸みを帯びた信号炎管。これはパーツピッカーでも厳しかったですね。

ピッカーに引っ付きはするんですが、いざボディの穴に差し込もうとすると、天面が丸いので、上手く力が伝わらないんですね。

そんなときは、これ。

ランナーの端に付いた「信号炎管用取り付け治具」。写真は切り離した信号炎管を逆さにして治具に装着した状態です。一体化して境が見えにくいんですが。。

がっちりとホールドしてますので、ボディ側を上下逆さにした状態で(取り付け治具から信号炎管を落とさないように)、ボディの穴に位置合わせをして力を加えると、恐ろしく簡単に取り付けできます。

さすがは専用治具ですね。

極小パーツピッカーは便利ですが、使用場所によっては向き不向きがあるようです。

無事に取り付けできました。

というか、ホイッスルカバーも信号炎管も、紛失事故ゼロ。

やっぱり、ツールを選ぶと効果も上がりますね。

ちなみに、今回も上級者向けの列車無線アンテナ取り付けは見送りました。実車では、Cアンテナ取り付け以前に列車無線アンテナが取り付けられているので、ちぐはぐになってしまうんですけどね。

Cアンテナと前面手すり

そのCアンテナ。正しくは「C’アンテナ」と記載するようですが、TOMIXの説明書ではCアンテナと記載されています。

ちょっと力を入れると曲がったクセが付いてしまうのか、やや歪んでいます。

写真は前面手すり取り付け後ですが、どちらのパーツも、比較的大きさがあるので取り付けにそこまで苦労せずに済みました。

TNカプラーに交換

EF62への最後の加工は、アーノルドカプラーからTNカプラーへの換装です。

この換装は、過去にも何度も行っているので慣れているのですが、最初は、このカプラー・スカート部の取り外しに戸惑ったことを覚えています。

この○印部分のツメで引っかかっている、ということを意識すれば、スカート部の腕の部分を外側に開けるようにすることで簡単に外せるようになります。

スノープロウの上端のツメを内側に倒して下方へ押し出すように取り外し、アーノルドカプラーをTNカプラーへと載せ替えます。

逆の手順で元に戻せば完了です。

最後にボディを被せて、ガチっと合わせた瞬間、

側面のナンバープレートが転げ落ちました。

そんなに接合が弱かったでしたっけ??

何度も落ちるようなら接着剤のお世話になるかもしれませんが、ひとまずは接着剤なしで取り付けて、EF62の完成です。

14系客車のTNカプラー化

前回、最後尾となるスハフ14のアーノルドカプラーをTNカプラーに換装しただけで、他のアーノルドカプラー部分はそのままでしたので、今回は全車両をTNカプラー化します。

といっても、ボディに取り付ける単価の高いTNカプラーでは無く、アーノルドカプラーをTNカプラーに置き換える 0391「密自連形TNカプラー(Sカプラー対応・黒・24個入)」です。

台車を外して、マイナスドライバーで金属製のカバーを外し、

カプラーを置換えてカバーを取り付ければ完了です。

写真の下が、TNカプラーへの置き換え後、上がアーノルドカプラーのままです。見るからに車間が違いますよね。

24個入り(12両分)で税込み660円。500円前後で販売しているお店も多数ありますので、このコスパは絶大だと思います。

下り急行「能登」

というわけで、走らせてみました。

前回と同じくスハフ14を最後尾とする映像からですが、EF62牽引ですので上野~直江津間。つまりは下り列車となります。

アーノルドカプラーとTNカプラーの違いがハッキリと判る、というほどでは無かったですね。

それはともかく、青い直流機に牽かれて走る急行「能登」は、EF81牽引とはまた違う雰囲気を味わえます。それに、運転席側のC’アンテナが「独特感」を出してます。

急行「能登」は好きですが、さほどEF62に思い入れがあったわけではないので、自分でも意外でした。

これは、EF64(基本番台)で急行「ちくま」を牽引した時と同じような印象です。

側面が青一色の電機は、EF65-1000のクリームのラインや、北斗星のEF510での流星のデザインのような飾り気も何もなく、無骨な感じが力強さを感じさせるんでしょうね。

写真を何枚か。

これぞEF62牽引の急行「能登」という1枚です。

側面も見せるように。

編成全体を見えるように。「能登」らしさ、なら、14系寝台車+14系座席車の見えるこの写真の方が上かも、ですね。

上り急行「能登」

続いては、スハフ14側にEF62を連結しての映像です。

こちらも、深夜を力強く信越本線を駆け抜ける様子を感じます。勾配はありませんが。。

写真を1枚だけ。

最後に収納の話

TOMIXの7194「JR EF62形電気機関車(2次形・田端運転所)」ですが、C’アンテナを取り付けてしまうと、車両ケースに収納できなくなる、という大きな問題があります。

それは、この発泡スチロールのケースの、右側部分。前面を支える突起部分がC’アンテナと干渉するんです。

なので、突起部分を切り落としてしまいます。

切り落とし前
切り落とし後

そうすると、

このように、C’アンテナが発泡スチロールのケースには当たらなくなります。

ケースの左側は、C’アンテナが突起部分よりも上にありますから、対策(切り落とし)は不要ですが、見ての通り、ケース右側を下にして収納すると、車両が確実に右へズレ動きます。

すると、間違いなくC’アンテナは、ボディ側に押し付けられますので、収納の際には、十分お気を付けください。(既に、ボディ側に倒れかけてますが…)

というわけで、おしまいです。

前回、手が回らなかったEF62の準備を行い、ようやく急行「能登」を牽引させることが出来ました。

これを「完結編」としても良かったんですが、14系 急行「能登」なら、もうひとつ、やってみたいことがありますよね。

というわけで、完結編は持ち越し。

さすがに、3回連続で急行「能登」は面白くないのでちょっと開けますが、また走らせますよ。室内灯も入れたいですしね。