485系 特急「やまびこ」(前編)

2024年12月10日

485系交直両用特急形電車。子供の頃の「日本全国を走り回る国鉄特急を代表する電車」でした。

既に現車は形式消滅となっている過去の車両ではあるんですが、鉄道模型では何度も新製品が発売されています。JR東日本のジョイフルトレインへと改造されたものは別としても、最近ではTOMIXから「北近畿・エーデル丹後」(2024年9月)や「雷鳥(クロ481-2000)」(2024年3月)など、かなりのペースで製品化されています(再生産含む)。

JR移行後の地域色もあれば、いわゆる国鉄色もあり、さすがは長年、電車特急を代表する車両として走り続けただけのことはあります。

その中でも、485系を象徴する顔が、前面貫通型のクハ481-200番台。子供の頃に特急のイラストを描くと、センターとその両脇とに貫通扉を表す計3本の線を引いていた記憶があるので、200番台が好きだったんだと思います。貫通扉の無い300番台の方が、「雷鳥」でよく目にしていたはずなんですけどね。

そんな子供の頃の思い出をよみがえらせたのが、TOMIXから発売された 98589「国鉄 485系特急電車(クハ481-200)基本セット」他、です。

485系 特急「やまびこ」

このセットに標準でセットされているトレインマークがイラスト版の「やまびこ」。後で触れますが、他に交換用としてイラスト版の「いなほ」と、文字の「白鳥」があります。

485系の特急「やまびこ」。懐かしいですね。上野と盛岡を結ぶ昼行特急として、1965(昭和40)年10月から483系を使用して走り始めました。

1965年10月というのは東北本線が盛岡まで電化されたタイミングなんですが、それまで上野-秋田を走っていたディーゼル特急「つばさ」に併結されていた盛岡発着編成が電化に合わせて独立した、ということのようです。サロ・サシを1両ずつ連結した10両編成でした。

2年後の1967(昭和42)年10月には運転区間が東京-盛岡となります。東京-盛岡間の「やまびこ」。東北新幹線だけのものじゃないんですよね。

車両の減少(9両化)、増加(12両化)などを経て、1972(昭和47)年3月には3往復化。3往復とも485系の12両編成です。同年10月には季節列車1往復を含めて5往復に。一気に大所帯になってきました。

1973(昭和48)年4月からは、新幹線工事に伴って全列車が上野-盛岡間に。

1978(昭和53)年10月からは1往復が青森まで延長となって「はつかり」に吸収され、「やまびこ」は4往復としてエル特急に。この改正でトレインマークは文字からイラストへと変わっています。

この頃、12両編成中、サロ481が6号車だったんですが、実は4ヶ月前の6月から6号車へと移動していたんですね。それまでは、サロは2号車でした。

TOMIXの公式サイトにある1975年頃の編成が、1978年6月まで続いていた、ということです。

やまびこを表すシンプルなイラストのトレインマークを掲げて走ったのも意外と短い4年弱。1982(昭和57)年6月、東北新幹線大宮-盛岡間の開業で、新幹線の速達列車にその名を譲り、在来線特急の「やまびこ」は姿を消しました。

特急「やまびこ」として上野(東京)-盛岡間を走ったのが17年弱。その後、東北新幹線としては2024年時点で42年間走り続けているわけですから、すごいですよね。

ちなみに、特急「やまびこ」と言えば、西村京太郎氏の短編小説『新婚旅行殺人事件』(光文社発行『蜜月列車殺人事件』に収録)を思い出します。「やまびこ5号」の車内で爆発が起こり、十津川警部の部下、小川刑事の新妻が爆死する、というところから始まるストーリーです。「小説現代」1981(昭和56)年3月号が初出の小説ですから、イラスト版のトレインマークを掲げていたグリーン車が6号車の時代の編成となります。

逆に言うと、それくらいしか思い出さない、東北新幹線が走り始める前の東北地方には旅に出たこともありませんし、関西の私には馴染みの薄い列車でした。

TOMIX 98589「国鉄 485系特急電車(クハ481-200)基本セット」他

そんなわけで、トレインマークが「やまびこ」固定で取替不可なら手を出さなかったかもしれませんが、485-200系用として発売されているトレインマークに交換可能ですから、いろいろと楽しめそうです。が、まずは標準装備の「やまびこ」で楽しみたいと思います。

写真左から、
98589「国鉄 485系特急電車(クハ481-200)基本セット」
98591「国鉄 485(489)系特急電車(AU13搭載車)増結セット(M)」
98593「国鉄 485系特急電車(モハ484-600)増結セット」
9021「国鉄電車 サシ481(489)形(AU13搭載車)」
9020「国鉄電車 サロ481(489)形(AU13搭載車)」
です。

1978年10月改正以降の「やまびこ」編成を揃えるには、これだけのセットが必要です。全車とも「ハイグレード(HG)仕様」ですし、結構な金額になりましたね。

ブック型のカバーを外すと、485系「やまびこ」のイラストが大きく現われます。

98590「国鉄 489系特急電車(クハ489-200・600)基本セット」の方は、「しらさぎ」なんでしょうか。

プラケースを開けると…。

なんか妙な配置なんですが、これには大きな理由があったんです。それに気付いたのは2冊にまとめようとしたとき、ですが、それは後ほど。

2両セットは、紙箱を開けると発泡スチロールだけの(商品名などの記載された紙が無い)クリアケースが現れます。

では、まずクハ481を取り出してみます。

クハ481-200

特急のシンボルマークがないのでちょっと締まりが無いですが、原色の381系を購入した時に感じた「そうそう、これこれ」感は大きかったですね。

ただ、シンボルマークだけでなく、JNRマークもないので、走らせるにはいろいろと準備が必要となります。

モハ484-200

基本セットのモハ484-200なので、モーターを積んだ動力車(だったはず…)です。

大きな菱形のパンタグラフが国鉄時代を感じさせます。

モハ485

屋根上の冷房装置がキノコ型のAU12から、AU13へと変更になった車両です。

ちなみに、AU12というのは、こんな形。

トワイライトエクスプレスのスシ24-2 2012年5月 洞爺駅にて

スシ24-2は、サシ489-4が種車となっていますので、冷房装置もサシ489-4時代のAU12のまま、ということですね。

サシ481

そのサシ489、481も、1972(昭和47)年後半以降の増備車は、AU13搭載となります。

今回製品化されたサシ481(489)も、キノコ型のAU12ではなく、AU13搭載です。

同じくトワイライトエクスプレスつながりで。

トワイライトエクスプレスのスシ48-3 2014年11月 大阪駅にて

スシ24-3は、種車がサシ481-52。485系の食堂車として、1973年に製造された車両からの改造です。

こちらサイドの模型の写真がこちら。

厨房側の窓が上方に寄ってますが、上辺は赤帯よりも上だったんですね。

この写真にも少し写っていますが、両端には検査などでの編成分割時に先頭に立てるよう、簡易運転台が備わっています。

運転台の窓と共にヘッドライトとテールライトが装備されています。模型では点灯しませんけどね。

食堂車の簡易運転台は、サシ581にもありましたね。

https://try-widely.com/limited-exp-suisei-2/ より再掲

ライトの作り込みに関しては、TOMIXの方がリアルかも。通常は、見えない箇所ですけどね。

サロ481

窓の数が普通車よりも多く、グリーン車のマークも付いていますので、判りやすいですね。

こちらもAU13搭載です。

モハ484-600

最後に紹介する1両は、98593「国鉄 485系特急電車(モハ484-600)増結セット」のモハ484-600。

485系の予約をするとき、TOMIXの編成例にある記載のままに購入したので、実は番台区分をよく理解してなかったんですが、600番台は、東北特急ならではの理由から生まれた型式だったんです。

モハ484-200と比べて、ドア側パンタグラフの下にある窓ガラスが小さいですよね。

普通車ですが、専務車掌室と車販準備室が設けられています。

一般に、専務車掌室は優等のグリーン車に設けられることが多いんですが、東北特急はグリーン車が2号車と編成端に寄っていることから、編成の中ほど専務車掌室が来るよう、このモハ484-600番台を挟んだということです。

付属品

写真は、基本セットの付属品です。

左上から、特急シンボルマークと、大きな一枚になっているランナーに、ホイッスル用取り付け治具、ホイッスル、列車無線アンテナ、ラジオアンテナ。左下から右に、台車排障器、台車枠、トイレ・洗面所流し管、列車無線アンテナ用穴開け治具、黒いランナーがATS車上子、トレインマーク(イラストの「いなほ」、文字の「白鳥」)、それにダミーカプラーと、盛り沢山です。

多く見えるのは、同じランナーに、このセットでは使わないパーツが含まれているから、というのも理由の一つですね。

トイレ・洗面所流し管は、マニアックですね。いまでこそトイレはタンク式が当たり前ですが、それまではそのまま沿線に…、という時代でした。200番台なので、登場時から循環式のトイレだったんじゃないかと思うんですが、そうでもないんですかね。。

ひとまずは、標準装備のタンクから交換はしない予定です。

台車排障器と台車枠は、クハ481の運転台側、標準のスノープロウ付き台車からの交換用です。東北特急ならスノープロウ付きで問題ないでしょうね。

付属品は、この他に、転写シートがありますが、それは後ほど。

増結セットは、車両両数分のトイレ・洗面所流し管と転写シート。サロ481には、ラジオアンテナが付属品として添付されています。単品のサロ481、サシ481には転写シートはありません。

編成を決める

基本セットに増結セット、それに単品の車両を組み合わせると、編成できる列車の数はかなり多いんですが、今回、走らせようと思っているのは、標準でトレインマークがセットされている「やまびこ」。

イラスト版のトレインマークということは、1978(昭和53)年10月改正以降の「やまびこ」ということですね。

つまりは、これです。

特急「やまびこ」

1978(昭和53)年10月~1982(昭和57)年6月

←32M/34M/36M/38M 上野

31M/33M/35M/37M 盛岡→

123456789101112
クハ481-200モハ484-200モハ485モハ484-200モハ485サロ481サシ481モハ484-600モハ485モハ484-200モハ485クハ481-200
指定席指定席指定席指定席指定席グリーン食堂車指定席指定席自由席自由席自由席

車番決めと転写シート

98589「国鉄 485系特急電車(クハ481-200)基本セット」には、この転写シートが2枚

ライトボックスに載せて撮影(以下同様)

これまで、TOMIX製の車両セットをいくつか購入していますが、そのたびに悩むのが(悩む、と言いながら楽しんでるんですが)車番決め。唯一悩まなかったのが583系「きたぐに」。

B5編成かB6編成かで、10両分の車番が確定するので、特に悩む必要が無かった、ということです。

車両数の多い24系25形などは無数に近い組み合わせがあるので、当時の乗車ルポなどから実在した編成の車番を選んだりしていたんですが、手元にはブルートレインほど電車特急の資料が無く、どうしようかと思っていたんですが、転写シートを見てニヤリ。

ご丁寧に「編成例:ひばり・はつかりなど」「編成例:雷鳥・しらさぎなど」「編成例:にちりん・有明など」と編成分の車番をまとめてもらっています。

この並び順は、1975年頃とされた「ひばり」「はつかり」等のものです。

つまりは「ひばり・はつかり」は1975年頃の青森運転所、「雷鳥・しらさぎ」は1974年頃の向日町運転所、「にちりん・有明など」は、1980年頃の南福岡電車区の車両、ということですね。

他にこれといった情報もないし、もう、これをそのまま使っちゃおう、と。

ただ、編成順が変わる1978年10月以降、サロ481-73を2号車から6号車に持ってくるだけでいいのか?とちょっと調べてみると、10号車モハ484-210と11号車モハ485-106が、1978年10月改正に向けて、直前の9月に青森運転所から金沢運転所に移動してるんですね。

なので、このままだと、ちょっと気になるところ。そこで、1978年10月時点で青森運転所に所属していた車両を当て、10号車をモハ484-232に、11号車をモハ485-128としました。この組み合わせは、MM’ユニットとして青森運転所向けに新製された組み合わせなので、ベストなんじゃないかな、と。

ちなみに、増結セット(98591・98593)には、次の転写シートが、それぞれ2枚ずつ入っています。

結局、増結セットの車両も、単品の車両も、基本セットの転写シートで賄えそうですね。

先にも書きましたが、単品のサロ481、サシ481に転写シートは入っていません。

基本セットの転写シートには、車番の他に、ATS標記、JRマーク、JNRマークが用意されています。

JNRマークは、左右に赤い線が入っています。

これは、

こんな感じで赤帯と合わせることで、ぴったりと位置合わせが出来る、という親切設計です。(と思ってました。。)

というわけで、転写を開始するんですが、今回は写真を多用して記事が長くなったので、一旦ここまで。

次回は、車番などの転写とその他付属品の取り付け、それから走行の様子を書きたいと思います。