カーブを駆け抜ける 381系 特急「くろしお」

南紀を走る特急「くろしお」。いや、私にとっては L特急「くろしお」の方が、いまだにしっくり来ます。

なかでも、1978(昭和53)年10月から2015(平成27)年10月まで、長きにわたって走り続けてきた381系が「くろしお」を象徴する車両だと思っています。

その381系100番台の特急「くろしお」編成が、KATOから再生産されました。

特急「くろしお」小史

特急「くろしお」は、紀勢本線をぐるりと周る天王寺-名古屋間(亀山経由)の列車として1965(昭和40)年3月に誕生しました。現在でも非電化の三重県内を走るため、キハ80系を使用したディーゼル特急としての登場です。この頃は、和歌山-新宮間も非電化でした。一等車(現グリーン車)複数車両に加えて食堂車も連結する豪華列車だったようです。

1967(昭和42)年10月には天王寺-白浜・新宮の各1往復が増発されて3往復に。

翌1968(昭和43)年10月のヨンサントオ改正では季節列車を含み、5.5往復となっています。この頃、急行「きのくに」は定期列車だけで天王寺発南紀方面行が10本、天王寺着が8本に季節列車が3往復と、特急「くろしお」よりも圧倒的に急行「きのくに」が多い時代でした。

1972(昭和47)年3月改正、同年10月改正と「くろしお」の運転本数は増え続けます。この10月改正からはボンネット型のキハ81形も運用に加わっています。

2009年1月 交通科学博物館にて撮影したキハ81形車両

特急「くろしお」の体制が一変したのが、1978(昭和53)年10月のダイヤ改正。

紀勢本線和歌山-新宮間の電化により新宮駅以遠は特急「南紀」に系統分離。「くろしお」は天王寺-白浜・新宮の381系電車による L特急となりました。季節列車を含め9往復(白浜2往復・新宮7往復)となっています。

一方の急行「きのくに」はこの改正こそ季節列車を含む9往復を維持しましたが、2年後の1980(昭和55)年10月改正では「くろしお」が10往復、「きのくに」が6往復と逆転しています。

1985(昭和60)年3月改正ではついに急行「きのくに」が廃止され「くろしお」は季節列車を含む16往復へと増発しています。この改正では増発となる4往復分が485系による運転となりましたが、もちろん振り子式ではありませんので所要時間が延びたと記憶しています。(翌年には485系は福知山に転出し、再び381系に統一されています)

JR化以降、1989(平成元)年7月には「スーパーくろしお」が登場し、新大阪(一部京都)への乗り入れも開始しています。このときに白浜・新宮方面行が下り(奇数号)、天王寺・新大阪方面行が上り(偶数号)に変更されています。国鉄時代の東京基準からJR西日本に移管したことを象徴する出来事でしたね。

1996(平成8)年7月には283系が投入されて「スーパーくろしお(オーシャンアロー)」が走り始めます。その後は増発や季節列車化などで列車本数の増減がありつつ、2012(平成24)年3月改正からは287系が投入され、「くろしお」の印象も大きく変わりました。

2015(平成27)年10月には683系を直流化した289系車両によって、287系で運転されていた5往復が置き換えられ、それによって捻出された287系で、新宮発着で残っていた381系5.5往復が置き換えられることで、381系での運転が終了しています。

その後は、車両の置き換えや停車駅変更、新型コロナウイルスによる利用客数の低下から一部列車の運転取りやめなどもありましたが、いまのところの最後のトピックは今年3月の大阪駅(地下ホーム)への停車という明るいニュースになりますでしょうか。

2023年3月18日に大阪駅24番のりばで撮影した「くろしお10号」

L特急「くろしお」の思い出

個人的には、小学校1年生のときに、家族旅行で白浜へ出かけた時に乗車した「くろしお」の印象が非常に強く残っています。

父親の仕事の都合で、夜だったか夕方だったかに天王寺駅を出る列車だったので車窓の記憶は全くないんですが、まだ新しい381系の車両に乗ったという記憶があります。激しく揺れたかどうかの記憶は無いですけどね。

それが記憶に残る国鉄特急の初乗車だったので381系への思い入れが強い、というわけです。この旅行が鉄道好きへと進むきっかけになったのは間違いないと思ってます。

写真は、その時のものではなく、数年後に遊びに出かけた時に撮影したものですが、天王寺駅の頭端式ホーム1番のりばに停車中の「くろしお」です。光って判りにくいですが、側面にJNRのエンブレムが輝いてます。

KATO 381系100番台「くろしお」

というわけで、思い入れの強い国鉄色の381系「くろしお」。製品化(再生産)されたのはJR化後のものですので、上の写真のJNRマークは無く、代わりに白いJRマークが付けられたものですが、再生産の案内とほぼ同時に予約していました。

2021年の秋から鉄道模型趣味を再開したんですが、その頃は夜行列車への関心が高かったので、ひょっとしたら、まだ新製品ロットの商品が入手出来ていたかもしれないですが、気付いたころには入手も難しくなっていて、今回の再生産に飛びついたわけです。

左が 10-1868「381系100番台「くろしお」6両基本セット」、右が 10-1869「381系100番台「くろしお」3両増結セット 」です。

開封するとこんな感じ。

増結セットの方にも、同じ説明書が入っていますが、パッケージサイズの都合で、半分に折られた状態になっています。

KATOの商品紹介ページに、

  • 6両基本セットのブックケースに3両増結セットの車両を収納可能。9両フル編成が1つのブックケースに収納できます

との記載がある通り、基本セットの方には、3両分の収納スペースが用意されています。

車両収納部のウレタンを外すとこの通り。

増結用の3両は、写真1番上の1号車と、その下の5号車の間に入る、グリーン車を含む2~4号車になりますから、判りやすく並べ替えると、こうなります。

ちなみに、編成表はこのようになっています。

特急「くろしお」

← 新宮

天王寺 →

123456789
クハ381
-126
モハ380
-65
モハ381
-65
サロ381
-22
モハ380
-61
モハ381
-61
モハ380
-63
モハ381
-63
クハ381
-125
2~4号車が増結セット

閑散期は5・6号車が減車となるようですが、減車させる場合は、模型では7・8号車を抜きましょう。6号車が動力車ですからね。ちなみに、車両の号車札はプリントされていません。

車両を取り出す

では、さっそく車両を取り出してみます。といっても、収納ケースをまとめた時点で取り出しているんですが。。

変換式トレインマーク

それはともかく、トレインマークとライトの確認。

いや、懐かしい姿です。

運転席下の側面にJNRマークは無いですが、十分に懐かしさを感じさせてくれます。

上の方で少し触れましたが、これまで購入した車両は、その多くが夜行列車として運転された車両です。「トワイライトエクスプレス」や「富士」「はやぶさ」などのブルートレイン、10系寝台車、20系寝台車はもちろんのこと、12系、14系、43系座席車も、夜行急行などのために購入したもの。

客車だけではなく、電車でも583系「きたぐに」に285系「サンライズエクスプレス」と寝台列車です。気動車も、キハ58系、キハ181系と、夜行列車での運用実績があるものばかりでしたので、今回の381系購入は極めて異例です。やっぱり、思い入れの強さですかね。

そういう意味では「くろしお」が最もふさわしいのですが、変換式トレインマークですので、このような表示もできます。

「やくも」に、「きのさき」「こうのとり」。「こうのとり」は黄色に白字なのでちょっと見えにくいですが、ビッグXのデザインかつ黄色なので、それだけで「こうのとり」と判りますよね。きっと。。

車体振り子機構

もうひとつ気になっていたのが、

  • 実車同様、曲線通過時に内側への車体傾斜を再現するKATO独自の車体振り子機構を搭載

という文字。

どんなものか気になって、カントのあるカーブレールに乗せてみました。

TOMIXのレールですので、いずれの写真も、左がC317・右がC280です。

どちらの写真も、285系よりも381系の方が、より傾いているのが判ります。

後ほど、走行の際には大半径カーブレールでも試してみたいと思います。ただ、自作カーブレールはちょっとカントが強すぎるので、高速走行しないとカーブ内側に転げ落ちないか、心配ではあります(って、大袈裟です。そんなことはありません)。

それでは、さっそく走らせてみたいと思います。

走行の様子

まずは、駅での発車と、駅の通過シーンから。

普段、夜行列車を走らせることが多いので、どれくらいのスケールスピードが適切なのか難しいのですが、電車特急らしい走りを見せてくれたと思います。

駅からの発車は、もう少し調整すればスムーズに発進できたと思うのですが、スロットレスモーターで低速からの加速も安定してましたね。

続いては、カーブでの走行シーン。

振り子式だからというわけではないんですが、カーブ区間を高速で走らせても違和感が無いというか、絵になりますね。

ちなみに、対向側を走らせていたのは、EF58が牽引する12系客車。1970年代には、急行「きのくに」の臨時列車としても走った姿です。JR化後の「くろしお」とは時代が異なりますので、イベント列車的な扱いで走らせてみました。

最後に、写真を何枚か。

少し角度を変えて。

サロ381はシートカラーが普通車とは違っています。

走行中のシーンが回送列車のように見えてしまうので、いずれ、室内灯を入れてあげたいところですね。

カーブを走る姿は、さすが381系という感じがします。

屋根の上がすっきりしているのも381系の特徴ですよね。12系と比べると、すっきりし過ぎてます。。

最後の写真も、12系とのすれ違いの様子です。

今回、国鉄色の特急電車に手を出してしまいましたが、再生産があったら購入するんだろうなぁ、という候補もいくつかあります。

客車列車の方は、実車としては終わりが見えてしまったので、「過去」を模型で楽しむだけでしたが、電車の方は現在も、それからまだ見ぬ未来もありますから、この沼は危険ですね。。