夜行鈍行「山陰」とスユニ50
前回は、山陰本線を走る寝台特急「出雲」の東海道本線区間、EF65形500番台と20系客車を走らせました。
EF65形500番台+20系の組み合わせは、客車が24系に置き換わる1975(昭和50)年3月改正までのこと。
今回は、その5年ほど後となる1980(昭和55)年10月改正以降の山陰本線の列車を走らせてみたいと思います。
その頃、寝台特急「出雲」は、東京-浜田間の「1号/4号」が2段B寝台にA個室、食堂車込みの24系25形(カニ24を含めて12両)、東京-出雲市間の「3号/2号」が3段B寝台にA寝台、食堂車込みの14系14形(8両/東京-名古屋間は寝台特急「紀伊」6両を連結)で、東京-京都間はEF65形1000番台、京都以西はDD51が牽引する、という時代でした。
ブルートレイン全盛の時代ですね。
その時代に同じく山陰本線を走っていた列車、「山陰」という名前を与えられた普通列車が今回のテーマです。
普通列車「山陰」
メインタイトルに「夜行鈍行」と名付けましたので、「あぁ、KATOの新製品か」と思われた方も多いでしょうが、そうではないんですね。それについては、後ほど。
というわけで、まずは「山陰」について、書いてみたいと思います。
特急列車と違って、歴史的な流れを記載した資料が手元になく、寄せ集めの情報となりますが、さすがは長い距離を結ぶ山陰本線だけあって、古くから長距離を走る普通列車が多数ありました。
古くは、まだ山陰本線が出雲市以西が断片的にしか開通していなかった頃、大正時代から京都と大社を結ぶ普通列車が存在し、二等寝台車の連結が行われていたようです。
手元にある時刻表復刻版1925(大正14)年4月号を見ると、
(619列車) 京都 20:35 - 福知山 23:22/23:28 - 鳥取 3:20/3:26 - 米子 5:40/5:48 - 松江 6:34/3:38 - 出雲今市(現・出雲市) 7:30/7:44 - 大社 7:57
(618列車) 大社 17:22 - 出雲今市 17:35/17:40 - 松江 18:28/18:30 - 米子 19:16/19:22 - 鳥取 22:02/22:15 - 福知山 2:55/3:02 - 京都 5:55
と、現在と比べても、さほど見劣りしない速さで走っていました。619/618列車共に、全区間二等並形寝台車を連結していて、寝台料金は上段3円、下段4円50銭だったようですね。
その後1935(昭和10)年~1941(昭和16)年には三等寝台車も連結されていたようですが、1944(昭和19)年には戦時体制下で、列車そのものが廃止となっています。
恐らくは戦後まもなく復活していると思われるのですが、資料がありません。
東海道新幹線が開通する1964(昭和39)年10月の直前のダイヤでは、1等座席車(今でいうグリーン車)を連結した普通列車として、京都-下関・門司間のロングランで運転されています。
(817列車) 京都 22:05 - 鳥取 3:29/3:34 - 米子 5:30/5:38 - 出雲市 7:21/7:31 - 浜田 10:12/10:17 - 長門市 13:52/13:59 - 下関 16:27
(818列車) 門司 8:41 - 下関 8:59 - 長門市 11:14/11:28 - 浜田 15:02/15:18 - 出雲市 18:23/18:51 - 米子 20:31/20:41 - 鳥取 23:09/23:15 - 京都 5:30
1964(昭和39)年10月の改正では、
(817列車) 京都 21:56 - 鳥取 4:37/4:43 - 米子 7:24/7:32 - 出雲市 9:23/9:47 - 浜田 12:32/12:45 - 長門市 16:17/16:28 - 下関 18:34
(818列車) 門司 8:41 - 下関 8:59 - 長門市 11:14/11:28 - 浜田 15:02/15:18 - 出雲市 18:23/18:51 - 米子 20:33/20:43 - 鳥取 23:09/23:15 - 京都 5:25
と、上りはほぼ同じダイヤですが、下りが異常に遅くなっています。何が違うのかと見てみると、それまで、この817列車は、京都-米子間を急行列車並みの停車駅で走っていて、大阪-大社・浜田間を走る普通717列車(1等B寝台車連結)が福知山-鳥取間の多くの駅に停車(6駅のみ通過)していたんですが、この改正で717列車が、のちの急行「だいせん」となる急行「しまね」に格上げとなり、福知山-米子間を、もとの817列車からさらに停車駅を減らしたダイヤで走るようになったので、両列車の筋を入れ替えた、という感じですね。
817列車は普通列車ですし、それが自然と言えば自然です。
1967(昭和42)年10月改正時刻表では、京都 21:56 - 下関 18:42 と大きくは変わらないものの、829列車と名前を変え、1等車連結は京都-出雲市間と明記されています。上りは826列車となり、下関 8:55 - 京都 5:21 と運転区間を縮小しています。
大きな変換点は1968(昭和43)年10月改正のいわゆるヨンサントオ改正。京都-出雲市間で2等寝台車を連結するようになりました。ただし、時刻表上に注釈があり、寝台券は「始発駅と主な停車駅で販売」となっています。マルスでの発券では無かった、ということですね。
ダイヤは、下り829列車が 京都 22:03 - 下関 18:42、上り826列車が 下関 8:58 - 京都 5:24 と大きな変化はありません。
1972(昭和47)年3月改正の時刻表では、827列車は京都-出雲市間の普通列車となっています。ヨンサントオの次の大きな改正がこれですので、この改正で短縮されたんでしょう。山陽新幹線岡山開業で陰陽連絡の体系も変わり、急行「出雲」が寝台特急「出雲」に格上げされるなど、山陰エリアで大きな変更のあったダイヤ改正です。
1969(昭和44)年のモノクラス制移行でB寝台連結と呼び名は変わっていますが、1972年改正時も寝台券は「主な停車駅と交通公社の営業所などで発売」となっています。
ダイヤは
(827列車) 京都 22:04 - 福知山 0:21/0:55 - 鳥取 4:36/4:50 - 米子 7:31/7:39 - 松江 8:27/8:34 - 出雲市 9:31
(826列車) 出雲市 19:03 - 松江 19:51/19:56 - 米子 20:41/20:53 - 鳥取 23:17/23:25 - 福知山 2:53/3:04 - 京都 5:19
となりました。
1975(昭和50)年3月改正で、マルスによるB寝台券の発券が開始されることに伴い、普通列車でありながら「山陰」という名称が与えられました。寝台車連結の普通列車「からまつ」(小樽-釧路)、「南紀(後の はやたま)」(名古屋-天王寺)、「ながさき」(門司港-長崎・佐世保)も同じような時期に名前が付けられています。
その後、ダイヤとしては大きな変化は無いものの、1980(昭和55)年頃には、郵便車がスユニ61からスユニ50に近代化されたようです。座席車はスハ43系を主体とした編成のままです。
1982(昭和57)年11月改正で、下りの列車番号が829列車となっていますが、ダイヤはほぼそのままです。
1984(昭和59)年1月末で全国の郵便輸送が終了となり、2月改正で「山陰」からも郵便車・荷物車が外され、同時に座席車も旧客から12系へと置き換わりました。寝台車はオハネフ12のままです。
この姿も長くは続かず、翌年1985(昭和60)年3月のダイヤ改正でついに「山陰」が廃止となります。
京都-福知山間はほぼ同時刻に普通列車が新設され、福知山駅で大阪から来る急行「だいせん5号」に乗り換える形となっています(両列車の福知山駅での接続は以前から)。
上りは急行「だいせん6号」の福知山到着を受けて福知山-京都間の普通列車が新設されています。
普通列車「山陰」の編成
というわけで、鉄道模型の話に戻ります。KATOの 10-1879 夜行鈍行「山陰」 9両セット の発売が、気にならなかったわけではないんですが、構成される車両を見て、「欲しい!買いたい!」とは、ならなかったんですね。全車とも旧客ですし、手持ちの車両と大差ないかな、と。
今のような固定編成主体とは違って、多少の違いは許容される時代ですし。
でも、「欲しい!」と思ったのが、同時に発売された 5141「スユニ50」。これは手持ちになかったので、予約して購入しました。といっても、「山陰」を走らせるためではなかったんですけどね。
そんなわけで、1980年頃から、郵便輸送が廃止になるまでの数年間の姿で走らせてみたいと思います。
1980(昭和55)年~1984(昭和59)年1月
←829ㇾ 出雲市
KATO | マニ60 | スユニ50 | オハネフ12 | スハフ42 | スハ43 | オハ46 | オハ46 | スハ43 | オハフ45 |
アレンジ | マニ60 | スユニ50 | オハネフ12 | スハフ42 | スハ43 | オハ46 | オハ46 | オハ46 | スハフ42 |
荷物車 | 郵便・荷物車 | B寝台 | 座席車 | 座席車 | 座席車 | 座席車 | 座席車 | 座席車 |
826ㇾ 京都 →
KATO | スユニ50 | マニ60 | オハネフ12 | スハフ42 | スハ43 | オハ46 | オハ46 | スハ43 | オハフ45 |
アレンジ | スユニ50 | マニ60 | オハネフ12 | スハフ42 | スハ43 | オハ46 | オハ46 | オハ46 | スハフ42 |
郵便・荷物車 | 荷物車 | B寝台 | 座席車 | 座席車 | 座席車 | 座席車 | 座席車 | 座席車 |
実際、「山陰」の編成端はスハフ42だった、という情報も多いですし、スハフ42での代用は問題ないと思います。残念ながらスハ43は手持ちが1両しかなく、スハ42もないので、スハ43の軽量版であるオハ46でいいかな、と。
マニ60は、10-899 郵便・荷物列車「東海道・山陽」 6両セットA の中の1両です。「山陰」と違って編成端に来ない設定のため、テールライトはありません。が、幸いにも下りは機関車の次位、上りはスユニ50と入れ替わって末尾に来ることが無いですから、テールライト非点灯でもOKです。
オハネフ12は、急行「きたぐに」のもの。実際にも、「山陰」の晩年は、急行「きたぐに」が14系化されて余剰となった宮原のオハネフ12-2000番台が使用されていたそうですから、問題なしどころか、正統です。
牽引する機関車はもちろんDD51です。
KATO 5141「スユニ50」
これまでも、スユニ50が無くて再現を諦めていた列車がいくつかあるので、欲しいなぁ、と思っていたんですが、「山陰」と同時に発売されるとは思ってませんでした。
というか、この秋には急行「さんべ」、急行「かいもん」でそれぞれの編成にセットされるそうですし、また買っちゃうのかなぁ、って(笑)
それはともかく、付属品はテールライトON/OFF切替用のドライバーくらいなので、何もすることは無いんですが、何もしなければアーノルドカプラーのままなので、これだけ付け替えます。
付け替えたのは、KATOカプラーNです。
荷物室側はテールライトが点灯しますが、ジャンパ栓が無いのがちょっと寂しいですね。
マニ60
郵便・荷物列車「東海道・山陽」 6両セットA のマニ60は、先述の通り、2両ともテールライトは付いていません。おまけに、これまで、セットの車両はスニ40や41、マニ36など、必要な車両の部品取りじみた使い方をしてたので、使用されなかったマニ60は、アーノルドカプラーのままだったんですね。
なので、スユニ50と共にKATOカプラーNに交換します。
さらに、下り列車では、DD51の次位になるので、TNカプラーと連結できるよう、穴あけ加工。
がっちりと噛み合うようになりました。
走行の様子
まずはいつもの通り、駅通過のシーンから。
3つのシーンをつないでいますが、最初の2つが下り「山陰」。荷物車から始まり、最後尾がスハフ42です。
最後が上り「山陰」。スユニ50のテールライトで締めくくっています。
荷物車、郵便車、B寝台車と続いて、6両の旧客座席車が連なりますが、スハ43とオハ46が違う、なんて、全く気付かないです。
それが旧客の良さ、でもあるんですかね。
続いては、カーブでの走行シーン。
山陰本線なので走行中に離合することは無かったでしょうが、好きな寝台特急「出雲3号/2号」と共に。
こちらも、下り、上りの順で編集しています。上りは序盤が統一感のある旧客、最後尾に近付くとB寝台車、茶色の荷物車、比較的新しい青いスユニ50と、違いが現れて見ていて楽しいですね。
最後に写真を何枚か。
まずは、下り「山陰」。
スユニ50とオハネフ12との連結部。下りならではです。
これだと、旧客の急行列車にも見えますが、雰囲気はあります。
下りも機関車を含めて最初の4両はバラエティーに富んで楽しいですね。
寝台特急「出雲2号」と。
ここからは上り「山陰」です。
最後尾のスユニ50にジャンパ栓が無いのが寂しいですが、暗いとよく見えないので、それほど気にならないですね。
なので、明るい駅に入ると、ホームで隠してあげないと気になってしまいます。
最後の写真はオハネフ12とマニ60。茶色の客車って、やっぱりかなりの時代を感じさせますよね。
52cm幅ベッドのオハネフ12も相当ですが。。
というわけで、KATOのセットものではなく、手持ちの車両と、新たに購入したスユニ50とで山陰本線の名列車「山陰」を走らせたお話でした。
【参考】普通「山陰」時刻表
この編成が走行していた1982年11月の時刻表(主要駅のみ抜粋)を挙げておきます。
【下り】
829 | ||
山陰 | ||
京都 | 発 | 2206 |
二条 | 発 | 2224 |
亀岡 | 発 | 2251 |
八木 | 発 | 2305 |
園部 | 着 | 2312 |
発 | 2314 | |
殿田 | 発 | 2332 |
和知 | 発 | 2355 |
綾部 | 発 | 016 |
発 | 023 | |
福知山 | 着 | 037 |
発 | 056 | |
和田山 | 着 | 136 |
発 | 139 | |
養父 | 発 | 146 |
八鹿 | 発 | 158 |
江原 | 発 | 208 |
豊岡 | 着 | 218 |
発 | 227 | |
城崎 | 着 | 237 |
発 | 238 | |
竹野 | 発 | 250 |
香住 | 発 | 313 |
浜坂 | 着 | 337 |
発 | 340 | |
岩美 | 発 | 404 |
鳥取 | 着 | 431 |
発 | 448 | |
浜村 | 発 | 516 |
松崎 | 発 | 539 |
倉吉 | 着 | 547 |
発 | 555 | |
浦安 | 発 | 617 |
赤崎 | 発 | 637 |
大山口 | 発 | 713 |
米子 | 着 | 733 |
発 | 748 | |
安来 | 発 | 758 |
松江 | 着 | 825 |
発 | 843 | |
玉造温泉 | 発 | 857 |
宍道 | 発 | 924 |
出雲市 | 着 | 948 |
【上り】
826 | ||
山陰 | ||
出雲市 | 発 | 1923 |
宍道 | 発 | 1948 |
玉造温泉 | 発 | 2005 |
松江 | 着 | 2019 |
発 | 2024 | |
安来 | 発 | 2051 |
米子 | 着 | 2101 |
発 | 2109 | |
大山口 | 発 | 2130 |
赤崎 | 発 | 2159 |
浦安 | 発 | 2209 |
倉吉 | 着 | 2230 |
発 | 2239 | |
松崎 | 発 | 2246 |
浜村 | 発 | 2313 |
鳥取 | 着 | 2337 |
発 | 2343 | |
岩美 | 発 | 006 |
浜坂 | 着 | 025 |
発 | 026 | |
香住 | 発 | 049 |
竹野 | 発 | レ |
城崎 | 着 | 114 |
発 | 115 | |
豊岡 | 着 | 125 |
発 | 128 | |
江原 | 発 | 144 |
八鹿 | 発 | 156 |
養父 | 発 | レ |
和田山 | 着 | 209 |
発 | 213 | |
福知山 | 着 | 248 |
発 | 258 | |
綾部 | 着 | 310 |
発 | 314 | |
和知 | 発 | 344 |
殿田 | 発 | 411 |
園部 | 着 | 421 |
発 | 423 | |
八木 | 発 | 430 |
亀岡 | 発 | 443 |
二条 | 発 | 516 |
京都 | 着 | 524 |