片側選択式と完全選択式~TOMIXのポイント (2)

TOMIXの新旧ポイントの違いを紹介した記事を、今年の春に書きました。

もう少し、判りやすく、違いを比較しながら解説してみたいと思います。

片側選択式(TOMIX旧ポイントレール)

まずは、片側選択式。

片側選択式の「1212 ニュー電動ポイント PL541-15 」(写真は説明のため、ポイント駆動部を外しています)

道床部分全体が茶色の旧製品です。ポイント駆動部がセットになった商品の発売当時の名称は「ニュー電動ポイント」と「ニュー」が付いていました。当時としては革新的だった、ということなんでしょうかね。

この片側選択式ポイントの最大の特徴は、分岐がどちら側になっていても、外側のレールは導通しているということ。

直進側に切り替えたとき

写真の左から右に向いて車両が走る状態です。進行方向右側(下側)のレールがプラス(赤色で表示)、進行方向左側(上側)のレールがマイナス(青色で表示)となります。

選択されていない分岐側の右側は無電(黒色で表示)となりますが、左側はマイナスのままです。プラスが無いので分岐側の車両は動きません。

今度は、分岐側に切り替えた場合です。

分岐側に切り替えたとき

分岐側は、進行方向右側がプラス、左側がマイナスとなります。

選択していない直進側は、右側にはプラスが流れ続けますが、左側は無電になりますので、直進側の車両は動くことが出来ません。

なるほど、よくできたポイントです。

オーバル(楕円形のループ線)に分岐線を作ったり、分岐線から分岐するヤード的な配線には、何不自由なく使えると思います。

完全選択式(TOMIX現行ポイントレール)

続いては、現行製品のポイント。

完全選択式の「1282 電動合成枕木ポイントN-PL541-15-SY(F) 」(写真は説明のため、ポイントN駆動ユニットを外しています)

木製枕木の「1272 電動ポイントN-PL541-15(F)」も、電気的な動作は同じです。

これら完全選択式のポイントの特長は、選択側のみが通電し、選択されなかった側は無電になる、ということです。

直進側に切り替えたとき

直進側に切り替えたとき、分岐側の左側(マイナス)は、ギャップ部分で絶縁されます。ですので、上図を正確に描くと、ギャップ部分(黒色が始まる部分)までは、青色になるのですが、説明の本質ではないので、誤解を避けるために着色なしとしています。

分岐側に切り替えたとき

同様に、分岐側に切り替えたときは、直進側は無電となります。

こちらも直進側のレールには、ギャップ部分までプラスが流れていますが赤色表示は省略しています。

以上が、片側選択式と完全選択式との電気的な特性の違いとなります。

これらの特性を理解したうえで、次の「不可思議な現象」をご覧ください。

ヘッドライト・テールライト同時点灯の怪

ことの発端は、キハ181系「はまかぜ」がヘッドライトとテールライトを同時に点灯しながら走っていたのを目撃したことから始まります。

ヘッドライトとテールライトを同時に点灯しながら写真手前に向かって走っている

さすがに、これはヤバいとすぐに通電を止めたんですが、そのときの配線を模したのが下の写真。

下を並行に走る線路がループ状の本線。もちろん、下側の線路は車両が右から左に向かって走り、上側の線路では左から右に向かって走ります。ループは写真の下側にあるものとして、本線上側の線路を「外側線」、下側の線路を「内側線」と呼ぶことにします。

上に伸びる分岐はヤードを想定したもの。右にあるポイントからは、複数の線路に再分岐する想定です。ですので、右端のポイントより先を「ヤード線」と呼びます。その間の区間は「外側分岐線」「内側分岐線」と呼ぶことにします。

これを用いて、解説していきます。

解説に先立ち、今回使用するツールを説明しておきます。

踏板型方向指示LED

それがこれ。「0112 踏板型方向指示LED」です。

レール間に挟み込むように、両側に接点が出ていて、通電方向を表示してくれます。

主に走行する方向が決まっていれば、その行く手に緑色のLEDとなるようセットしておけば、順行の場合に緑色が、逆行の場合にオレンジ色が点灯します。もちろん、無電の場合は両方とも消灯となります。

上の写真では、写真右側から左側への走行を想定して、写真上側にプラスが流れると(車両は右から左へ走行)緑色LEDが、写真下側にプラスが流れると(車両は左から右へ走行)オレンジ色が点灯する、ということです。

これを2組買っていましたので、4つあります。

上の写真でも既に設置済みです。下から内側線・外側線・内側分岐線・外側分岐線の電流の流れが同時に確認できます。が、ヤード線の電流も見たいので、自作のパーツを取り付けています。

LEDが点灯する方向は次の通り。想定する順方向で緑色が点灯するように設置しました。

緑色点灯オレンジ色点灯
内側線(本線)写真右から左への走行
(写真上:プラス/下:マイナス)
写真左から右への走行
(写真上:マイナス/下:プラス)
外側線(本線)写真左から右への走行
(写真上:マイナス/下:プラス)
写真右から左への走行
(写真上:プラス/下:マイナス)
内側分岐線ヤードから本線への走行
(写真上:プラス/下:マイナス)
本線からヤードへの走行
(写真上:マイナス/下:プラス)
外側分岐線本線からヤードへの走行
(写真上:マイナス/下:プラス)
ヤードから本線への走行
(写真上:プラス/下:マイナス)
ヤード線本線からヤードへの走行
(写真上:マイナス/下:プラス)
ヤードから本線への走行(赤色)
(写真上:プラス/下:マイナス)

実証での確認

基本、本線のポイントは直進側での確認となります。

内側線のみ通電

まずは、内側線のみ通電します。

内側線のLEDだけが緑色点灯で、その他は消灯です。

ヤード側ポイントは直進側にプラスが来ていますが、反対側は無電ですので、分岐がどちらであっても車両が動くことはありません。

※写真の加工に手間がかかるため、線引きは「ざっくり」です。実際の通電と違う可能性がありますが、概念的な図としてご覧ください。

本線両側を通電・ヤードは分岐側

次に、本線は直進側、ヤードのポイントを分岐側にした場合。

少し本題から外れますので、無駄話に興味のない方は、次の見出しまで読み飛ばしてください。

まずは、写真をご覧ください。

んん?

本線の両線は順方向に通電していますが、分岐線のLED点灯は想定外です。

前回の記事では、本線上の導通しか確認してませんでしたが、想定では、外側分岐線とヤード線は写真上がマイナス、下が無電、内側分岐線は写真上がプラス、下が無電で、いずれも本線の分岐より先は写真下が無電となるはず。

なので、分岐側のLEDは消灯となることを想定していました。

が、いずれのLEDもが順方向に点灯しています。

これ、ひょっとしてLEDが媒介してるの?

以下、仮説です。

内外分岐線にある2個のLEDを通して、プラスからマイナスへの電流が流れたのかな、と。

なんか、ツールを使ったためにややこしくなってしまった感じはしますが、LEDのアノードからカソードに向けて流れているからこそLEDが点灯しているわけで、内側線分岐のLED(カソード)から片側選択式のポイントを通して外側線分岐のLED(アノード)に流れた(反対側はマイナス導通)と考えるのが自然かと思います。

ただ、内側分岐線に動力車や室内灯を設置している車両などがいれば、同じようなことが起こりうるのかもしれません。

本線両側を通電・ヤードは直進側

これが、ある意味本題です。

本線外側線のLEDが両方とも点灯しています。オレンジ色の発光がやや弱い感じはしますね。

これが、外側線を「はまかぜ」がヘッドライトとテールライトを点灯しながら順方向に走っていた状態です。

どのようになっていたかというと、

ここまでは、容易に想像できると思います。内側本線から、片側選択式のポイントを介して、内側分岐線にプラスが流れている状態です。

内側線のプラス観点で見ると、ヤードのポイントを介して、外側線の写真上側レールがプラスになります。

が、外側線のマイナス観点で見るとこうなります。

つまり、どういうことになるのかというと、

内側線のプラスがヤードのポイントを介して外側分岐線に入り、そのまま外側本線のポイントを介して外側本線に流れ込む、と。

便宜上プラスの赤とマイナスの青を混ぜた紫色で表現していますが、実際には、PWMの波形なので、紫のレールには、マイナスと導通しつつも、断続的に(超高速ですが)プラスの電流が入っている状態、となります。

赤色の線もPWMですので、常時プラス電流が流れているというわけでは無く断続的にプラスになるわけで、そのタイミング次第では、外側本線も上側のレールがプラス、下側のレールが無電となってオレンジ色(逆走側)のLEDがほんの一瞬点灯することになります。もちろん、超高速で点滅すると人間の目には点灯しているようにしか見えません。

なので、緑色に比べてオレンジ色の点灯が弱く見えるわけです。

※正式には、オシロスコープ等の計測機器で出すべきなんでしょうが、持ち合わせていませんので、簡易的な方法での推測となります。

問題を解決するために

では、この問題をどのように解消するのか、というと、片側選択式のポイントを、完全選択式のポイントに置換える、というわけです。

前回の記事では、ポイントを3ヶ所とも交換しましたが、今回は、要点の説明のため、ヤードのポイント1箇所だけを交換してみます。

ヤード分岐側

まずは、ヤードのポイントを分岐側に。片側選択式でLEDの問題は置いといて、問題が無かった方です。

ヤードのポイントが分岐側なので外側線のマイナスは導通していますが、プラスが無いので問題はありません。

片側選択式のときに発生していたLEDを介した(と思われる)導通は、完全選択式となることで、直進側が分離しますので、発生しなくなっています。

ヤード直進側

続いては、ヤードのポイントが直進側のとき。

内側本線からプラスは流れ込んでしまうんですが、内側分岐線とヤード線の写真上側は分離されており、内側線のプラスが外側線に入り込むことは無くなります。

これだけで問題解決です。

ただ、なんとなく不完全な気がしますので、根本側(本線側)も完全選択式にしておくのがいいでしょうね。

写真はヤード側が直進側ですが、分岐側でも同じことです。分岐側にはプラスもマイナスも入りません。

最後に、念のため、本線側のポイントを分岐側にしたときの写真を挙げておきます。

外側線:分岐側 ヤード:分岐側

外側線からヤードに向かって列車が進入していくケースです。

外側線:分岐側 ヤード:直進側

ヤードの列車を内側線に送り込むための準備です。内側線ポイントが直進側のため、内側線分岐にも、もちろんヤードにも電流が流れていません。

内側線:分岐側 ヤード:直進側

ヤードから本線内側線に走行可能な状態です。

内側線:分岐側 ヤード:分岐側

次の外側線からヤードへの進入のための準備として、ヤードのポイントを分岐側(外側線分岐側)に倒しました。内側線分岐線内は通電されていますが、ヤード内は無電となります。

以上で、ヤード等への分岐線での片側選択式ポイントと完全選択式ポイントの違いの説明を終わります。

今後は、この違いを応用したリバース線についての説明も書いてみたいと思っています。