片側選択式と完全選択式~TOMIXのポイント
自宅で鉄道模型を走らせるようになって半年余り。すれ違いなどを楽しみたいので、基本的には複線でレールを敷いています。
内側線・外側線から入るヤードを作る
内側線・外側線とで車両を入れ替える
現在、最長の編成は急行「きたぐに」の機関車1両+客車14両の15両編成。
外側線をしばらく走らせた後、反対側の内側線を走らせたい場合、どうするのが楽なのか。
最初は、連結した車両を1両ずつ切り離してリレーラーで線路に載せ、再び連結。これを15回繰り返していました。かなり面倒ですね。
次に考えたのが、複線部分の線路を一旦切り離して、内側・外側線を直結。列車を移動させた後、線路を戻します。お座敷レイアウトならでは、ですね。
でも、お座敷レイアウトならでは、で、線路を固定しているわけではないので、車両が載っているところにも線路切り離し時の振動が波及して、全車両が脱線転覆することも。こうなったら、笑うしかないです。
内側線・外側線の間のヤード
そこで考えたのが、内側・外側双方から出入りが出来るヤードの設置です。
オーバル(ループ)の線路をぎゅっと絞って複々線に見えてますが、下部に見える最も左の線路が写真上部に向かって走る線路(外側線)、その隣が写真下部に向かって走る線路(内側線)になります。
見ての通りで、内側線・外側線の間にヤードがあります。ポイントの操作により、
①外側線のポイントをヤード側に、ヤード内のポイントを外側線向きに設定して、外側線からヤードへの進入
②ヤード内のポイントを内側線向きに、内側線のポイントをヤード側に設定して、ヤードから内側線への進入
が出来ます。
こうすることで、外側線からヤード進入時は、内側線の走行には影響を受けず、ヤードから内側線への進入時は、外側線の走行には影響を与えません。
同じように、逆走にはなりますが、内側線からヤードを経由しての外側線への転線も可能です。
マグネットカプラーによる自動解放はやっていませんから(機関車はTOMIX・KATO混在)、機関車は手で移動させるのですが、15両を移すのとは段違いの手軽さです。
内側線・外側線の外のヤード
上下線間にヤードがあるのは、実際(網干総合車両所明石支所など)にもよくあることですから、これはこれでいいんですが、15両を転線できるヤードを作ろうとすると、線路の配置にかなりの制約が出てきます。本線をカーブさせようとすると、ヤードもカーブさせる必要があるという、面倒なことになります。
そこで考えたのが、クロッシングレールを使用した、内側線・外側線の外側にヤードを設置する、というプランです。
それが、これ。
実は、これが大問題を引き起こしていたんです。
経験のある方なら、「これ、ダメだよ」と言われそうな配線です。
外側線・内側線のポイントを本線側にしたときには、「内外線が互いに干渉することは無い」と思い込んでたんですね。
ところが、キハ181系の「はまかぜ」を走らせて、向かってくる姿を見て驚愕。
あれ?ヘッドライトとテールライトが両方とも点いてる!?
何かおかしい、と、運転を停止しました。
その後、とあることをするとこの状況が改善することを確認したので、検証してみました。
ポイント切り替え時の導通を確認する
問題の箇所を部分的に再現しました。
横に走る線路の上側が外側線、下側が内側線になります。
本線(外側線・内側線)ポイントは、ともに本線側での検証です。
本線のレールの上側どうしの導通を確認します。
テスターで両間の抵抗値を測ると、断線状態ですね。つながっていない、ということです。
では、これはどうでしょうか。本線のポイント設定は同じです。
内外線のレールが導通してますね。
何が違うのでしょうか。
違いは、ヤード内のポイントです。
上側(断線)の写真は、ヤード内のポイントが外側線向き、下側(導通)の写真は、ヤード内のポイントが内側線向きです。
走行時と同じように、内側線には写真左向きに走る電流を、外側線には写真右向きに走る電流を流してみます。
ヤード内のポイントを外側線(分岐側)向きとしたとき。
内側線は写真手前向きですのでヘッドライトだけ、外側線は写真奥向きですので、テールライトだけが点灯しています。
ヘッドライトが点灯するのは進行方向に向かって右側(写真では左側)のレールが+(プラス)、反対側が-(マイナス)の状態です。テールライトが点灯するのは、進行方向に向かって右側(写真では右側)のレールが+(プラス)、反対側が-(マイナス)の状態です。線路に流れる電流の極性に応じてLEDが点灯/消灯するということです。
一方、ヤード内のポイントを内側線(直進側)向きとしたとき。
外側線のみ、ヘッドライトとテールライトの両方が点灯しています。
問題の再現が出来たようです。
状況としては、外側線には、右側レールに+、左側レールに-が流れることでテールライトが点灯し、左側レールに+、右側レールに-が流れる、という異常状態となっています。
これは、PWMの罠でしょうね。パワーパックの出力を絞った状態だと、パルス出力のタイミングにより、どちらのレールにも電流が流れない時間があり、そこに、右側レールに+が流れる時間、左側レールに+が流れる時間が出来る、と。
時間が被っていなければ問題ないかというと、全くそんなことはありません。直流ではなく交流のような電流が流れるわけですから、LEDはともかく、モーターには相当な負荷がかかることになりますので、避けなければなりません。
※オシロスコープで電流を確認したわけではありませんので、上記文章には推測を含んでいます。
片側選択式ポイント
写真に写っているポイントは、TOMIXの1211、PR 541-15 です。
現在TOMIXから発売されているポイントは、「完全選択式」と明記されています。一方で、旧仕様のポイントは、当時は明記されていたかどうかは不明ですが「片側選択式」と呼ばれるものです。
見ての通り、写真手前の直線レールにはギャップが入っていません。つまり、ポイントがどちらに倒れても、直線レールの外側は導通している、ということです。
それと、ややピントが甘いのでわかりづらいかもしれませんが、分岐側の外側レール。分岐した後にギャップが入っているのでポイントの方向に応じて制御されているのかと思いきや、ポイントがどちらに倒れても、常に導通しています。
つまりは、ポイントがどちらに倒れても、外側のレールは常に導通しているということです。
では、振り返ってみましょう。
まずは、ヤード側ポイントが分岐側のとき。
ざっくりと、レールに色を付けてみました。
+が赤、-が青、電流が流れていないところが黒です。
もちろん、クロッシングレールでは、互いに直進方向のみが導通していて、ショートすることはありません。
次に、ヤード側ポイントが直進側のとき。
内側線の+が、ヤード内ポイントが直進に切り替わることによって、分岐側(外側)レールと導通し、外側本線ポイントの分岐側(外側)レールと導通することによって、外側線DCフィーダーからの-と、内側線のDCフィーダーからの+がショートしている状態となっています。
完全選択式ポイント
これを解消するには、現在販売中の完全選択式ポイントに置き換えるしかないですね。
完全選択式ポイントは、ポイントが選択された側のみ、どちらのレールにも導通するけれど、非選択側は、どちらのレールも電気的に絶縁されるというものです。
ですので、購入して置き換えた結果、このようになりました。
いずれも外側線・内側線の本線上ポイントは直進側です。
まずは、ヤード内ポイントが分岐側のとき(片側選択式でも問題がないケース)。
外側線・内側線は、互いに電気的に独立した状態です。
続いて、片側選択式で問題となった、ヤード内ポイントが直進側のとき。
いずれも、問題が無くなりました。
色付けはしませんでしたが、写真下側(外側線本線、ヤード内ポイントがともに直進側)の場合、ポイントを結ぶ線路は、どちらのレールも通電されていない状態(黒色)となりますね。
これで、一件落着です。
過去の事例を振り返る
逆に「今まで問題に気付かなかったのは、なぜ?」と疑問を感じました。
では、もう一度、外側線・内側線内にヤードを作ったときの写真をご覧ください。
内側本線のポイント。本線が「分岐側」なんですね。
つまりは、外側本線ポイントを直進側にしていた場合でも、ヤードに向けて+電流は入りますが、ヤード内ポイントが内側線向きの場合は、ポイントのギャップで絶縁。
ヤード内ポイントが外側線向きの場合は、内側本線ポイントまで+電流が来てしまうものの、内側本線ポイントが分岐側(通常走行側)に倒れていると、ポイントでギャップされる、と。
ある意味、問題が生じなかったのは、偶然でしかなかった、ということです。
昔からの鉄道模型趣味の方は、それくらい常識なんでしょうが、昔からのレールを最近触り始めた私のような人間は、気を付ける必要がありますね。
上記事例に、もう少し解説を増やした記事を記載しました。
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