寝台特急「北陸」の思い出

25度を超える気温になる日が増えてきた6月に、雪降る中、乗車した列車の思い出を振り返ります。

2010年3月のダイヤ改正で廃止になった寝台特急「北陸」。上野と金沢の間を毎夜走っていました。首都圏と北陸とを結ぶ夜行列車として人気があったのですが、北陸新幹線の金沢開業を待たずに廃止となってしまいました。

関西人にとっての「北陸」とは

ひとこと、「無縁」です。

金沢へは頻発する特急サンダーバードで2時間半ほどですし、富山へも当時は乗り換えなしでしたから、東京経由で北陸入りするのはありえないですね。

ましてや東京へ行くのに、東海道新幹線に乗らず、サンダーバード+北陸で行くというのは、鉄道好きでなければ考えられない行動パターンです。

なので、「日本海」が走っていた時代の首都圏と秋田・青森を結ぶ「あけぼの」とともに、関西人にとってはなじみの薄い列車でした。

ですので、廃止が確定するまでは乗車する機会に恵まれませんでした。

チャンスを活かせ

前年2009年12月に、「北陸」が2010年3月に廃止となることを知ったものの、年末年始は出かけられず、それを逃すと連休はありません。それこそ「土曜日に東京へ。北陸に乗って金沢へ行き、日曜日に帰宅」という完全な道楽になりますから、躊躇していました。(それをするのがマニアじゃないの?というところですけどね)

そこに、1月20日水曜日から1泊の出張の予定が入ったんです。静岡県内での打ち合わせと、翌21日の横浜での作業の予定。もちろん、22日は金曜日で平日ですから出勤日です。ただ、当時はフレックスタイムを導入している会社に勤めていたので、コアタイムの10時30分までに大阪市中央区にある会社に入ればOK。ということで、頑張れば21日の夜に横浜で仕事を終えて上野に行き、「北陸」に乗って翌朝に金沢からサンダーバードで戻ってこれるんじゃないの?と。

もちろん、会社には出張旅費を精算しなければならないですから、相応の理由が必要。東京往復よりも金沢を経由すると「乗車券は」安くなりますよ、と。「北陸」の特急券・B寝台券は自腹ということで許してもらいました。

乗車当日

1月21日は夜7時過ぎまで横浜市内にある取引先の会社で作業をしていて、桜木町駅から京浜東北線に乗車したのが20時前。東京駅に着いたのが20時半過ぎでした。

そこで夕食をとり、上野に移動したのが21時半頃だったでしょうか。駅周辺を散歩して再び戻ってきたのが22時20分過ぎ。推進運転での入線を見たかったので、13番線のホームではなく、頭端部で到着を待ちます。

廃止まで2ヶ月を切り、カメラを構える鉄道ファンの方々が大勢ですからね。自分もスーツ姿ということをすっかりと忘れてました。

上野駅13番線(22:47)
ホームはこんな状態

8号車のB寝台にバッグを放り込み、先頭へ。

当日の牽引車は EF64 1032(長岡駅まで)

もう少し前から、客車も写るように撮りたかったのですが、人が多くて断念しました。

このドアが別世界への入口でした。非日常への入口です。

乗車したのは2段式B寝台の上段。

折り畳み式の梯子も懐かしいアイテムです。

他の3席が空いているように見えますが、皆さん、ギリギリまでホームで写真を撮られているようでした。要はファンの方ばかりで…。平日ですしね。

23時3分。定刻に上野駅を発車。

車内放送の出だしは、もちろんハイケンスのセレナーデ。もはや貴重なチャイムです。14系の電子音ですね。撮影した動画から抜き出しました(実際には翌朝の音です)。

日付が変わり、0時31分に高崎を出ると、次の停車駅は翌朝の糸魚川。

山間部に入ってくるとトンネルも多くなり、先頭8号車には、EF64のホイッスルがよく聞こえます。深夜に響くレールのジョイント部通過音と、郷愁漂うホイッスルの音が眠気を誘います。いや、嘘です。全然眠れません。明日、仕事だというのに。

深夜の長岡駅から金沢まで

GPSの記録によると深夜2時52分頃のこと。列車はスピードを落とし、転線する分岐器を通過するフランジ音を響かせながら、ゆっくりと停車。長岡駅に到着です。

ここでEF64からEF81へと牽引機関車の交換です。

ただ、ここからは8号車は最後尾になるんですね。機関車連結の衝撃も感じず、3時16分に金沢へ向けて発車しました。

しばらく眠りにつきます。

「おはよう放送」は、富山到着20分前の5時20分頃でした。案内によると、雪のため5分ほど遅れているようですね。金沢では到着の30分以上後のサンダーバードに乗り換えるので、問題はないでしょう。

それにしても関越の山越えで足止めを食らわなくてよかったです。朝に目が覚めて水上駅なら目も当てられないですからね。

富山・高岡と停車をして、金沢へとラストスパート。

5分遅れだからと余裕で洗面をしていると定刻に金沢駅到着との車内放送。ちょっとバタバタしましたが、無事に金沢駅に到着です。

長岡-金沢間牽引の EF81-150

ヘッドマークに付いた雪が、豪雪地帯を走り抜けた力強さを感じさせました。

到着後10分ほどで、列車は回送として発車していきました。上野駅停車時はテール・機関車の撮影と走り回っていて、他の車両を意識していなかったのですが、北陸は8両中A個室(シングルデラックス)が1両、B個室(ソロ)が3両、開放2段B寝台が4両と、短距離路線としては豪華な編成でした。写真はシャワー室のある2号車が目の前を通過したときのものです。

北陸が出て行ってから10分ほどで上野からの急行「能登」が到着。15分ほど遅れていたようですね。この能登も同じく3月のダイヤ改正で廃止となりました。

青森発大阪行の「日本海」が35分ほど遅れて到着。そのあおりで、大阪行のサンダーバードも5分ほど遅れたのですが、雪の少なくなった福井県内で遅れを取り戻しました。大阪へは定刻に到着。というわけで、無事に出社できました。

乗車時のダイヤ

2009年3月14日改正の時刻です。

寝台特急「北陸」上野発金沢行

記載の時刻は、定刻(所定ダイヤ)のものになります。

3011
特急
上野2303
大宮2325
2327
高崎029
031
長岡
糸魚川435
436
魚津514
514
富山534
535
高岡551
551
津幡614
614
金沢626
列車名の特急は寝台特急「北陸」
太字は乗下車駅

乗車時の列車編成

← 上野行 (長岡-金沢間逆編成)

金沢行 →

12345678
B寝台B1個室A1個室B1個室B寝台B1個室B寝台B寝台
A1個室は「シングルデラックス」
B1個室は「ソロ」・B寝台は2段式
太字は乗車車両