お座敷レイアウトにフレキシブルレール(2)
自宅の廊下に線路を敷いて楽しむ、休日限定のお座敷レイアウト。
お座敷レイアウトは、毎回、敷設・撤去を行うので、道床がしっかりとした、組み立て・分解が簡単なレールを使うことになります。TOMIXではファイントラック、KATOではユニトラックの名称で製品化されているものですね。
私の場合はTOMIXのレールで揃えていますが、線路を展開する場所が幅の狭い廊下ということもあって、本線のカーブ半径は280mmと317mmの組み合わせ。
鉄道模型(Nゲージ)なら、こんなもの。という思いがあるので、さほど違和感がないかもしれませんが、現実の鉄道ではあり得ないほど急カーブです。
そんな話を書いたのが、こちら。
よりリアルな走行シーンを見たい、ということで、フレキシブルレールを使って、とりあえず走らせてみた、というところまででした。
今回は、その続編です。
作りたいもの
今回作成したいものは、大半径複線カーブレール。
もちろん、KATOのフレキシブルレールを使用します。
但し、TOMIXファイントラックの規格に合わせ、複線間隔は37mmとし、レールの両端にはTOMIXのジョイントレールS35-J(F)を使用することで、TOMIXのレールの中に容易に組み込めるようにします。
肝心のカーブ半径ですが、80.8cmのフレキシブルレールを極力無駄にしない(切り落とす部分を最小限にする)よう、また、扱いやすくするためキリのよい角度となるよう、「外側線 半径309.7cm、内側線 半径306cm、角度15度」のレールにしてみたいと思います。
実際には、両端に35mmのジョイントレールを付けますから、外側線で全長約88cmというサイズのカーブレールになります。
大半径カーブレールの作成
ベースを作る前に
TOMIXのファイントラックの中に組み込んで使用するため、同じ仕様で複線用のベース(土台)を作成します。
ワイドPCレールのベース(道床そのもの)は、複線で74mmになります。複線間隔が37mmですので、レール当たりの道床幅が37mm。つまりは、直線でもカーブでも、隙間なく複線にできるという仕様です。
では、ベース外側の円弧の半径は?
外側線の中心が3097mmなので、そこから複線間隔37mmの半分(18.5mm)を足した3115.5mmがベース外側の円弧の半径になります。
同様に、内側線の中心3060mmから18.5mmを引いた3041.5mmが、ベース内側の円弧の半径になります。
半径3041.5mmと3115.5mmの円弧からなる15度の扇形のパーツを作成する、ということですね。
理想は、単体で持ち上げた時にしならない程度の強度がある素材、なんですが、平面を走る線路に組み込むわけですから薄い方が良く、薄くてもしならない恐ろしく固い素材が必要となってしまいます。そうなると、加工も一苦労ですよね。
なので、今回はしなること(丁寧に扱うこと)を前提として、それほど強度のない、加工しやすい素材を使用します。それが、これ。
プラダンと呼ばれるものです。ポリプロピレン樹脂で作られたプラスチック段ボール。
養生シート等としてホームセンターなどで売られています。今回使用するのもまさにそれで、以前、養生用に購入したシートの余りを使用することにしました。
ベースを切り出す
上の方で0.5mm単位で数字を並べてますが、ベースなので数mm誤差があっても許容範囲。とはいえ、フリーハンドで書けるようなシロモノではないですから、なんらかのツールを使って円弧を描きたいところ。
そこで頼ったのが、ChatGPT。
日常生活から技術的なことまで、何でも答えてくれます。
(問い)
A4サイズの用紙に、半径300cmの円弧を正確に描くには、どのような方法がありますか?
「A4サイズに」と限定したのは4m四方の紙を前提にされては困るから、です。
(回答)
A4サイズの用紙に半径300cmの円弧を正確に描くためには、いくつかの方法があります。以下にいくつかの方法を示します。
- コンパスを使用する方法:
- コンパスの一方の脚を用紙の中心に置き、もう一方の脚を300cmの距離に設定します。
- コンパスを固定したまま、円弧を描くように回転させます。必要に応じて、円弧の一部分を描き、コンパスを移動して全体の円弧を描きます。
…以降、略
いつから、ChatGPTは冗談を言うようになったんでしょう。。
半径300cmの円を描けるコンパスって…。
(その後の回答)
確かに、家庭で300cmのコンパスを用意するのは難しいです。そういった場合には、以下の方法を試してみることができます。
- DIYコンパスを作る方法:
- 長い棒や紐、釘などを使用して、自作のコンパスを作ることができます。
- まず、棒や紐を半径300cmの長さにカットします。
- その後、棒や紐の一方を用紙の中心に固定し、もう一方をペンや鉛筆で握ります。
- このDIYコンパスを使って円弧を描くことができますが、誤差が生じる可能性がありますので、注意が必要です。
まぁ、これですよね。現実的に。
紐の先にシャーペンを結び、311.6cm先を床に固定したミニバイスに咥えさせます。
あれれ?
引けば引くほど、中心から遠ざかります。
紐は、種類(材質)を選ばないと伸びるんですね。。
というわけで、次に取り出したのが、0.28mmの極細ステン針金。
さすがに伸び縮みしません。逆に、ピンと張るのが難しく、若干小さめの円弧になってしまうかもしれないですね。
でも、紐の時よりは遥かに正確に線を描くことが出来ました。
外側の311.6mm、内側の304.2mmのそれぞれの円弧を書いたベースを2つ分用意します。
ワイドPCレールを合わせると、当然ながらピタリと一致します。期待が持てます。
カットする前に、イメージ通りかどうか、コルク道床とフレキシブルレールをマスキングテープで仮止めして雰囲気を確かめてみます。
コルク道床は仮止めしないと確実に真っすぐに戻ろうとしますので、この形状を手離しで見るのは初めて。レールも仮止めすると、さらに期待が高まります。
どうですか。この半径300cmオーバーのカーブレール。
一旦仮止めを外して、ベースの切り出し。まずはハサミで荒く切り落とし、それからカッターナイフで切っていきます。
プラダンなので、スーッと刃が通ります。ベースの硬さにこだわっていたら、ここで苦労するのが目に見えます。
2枚のベースを切り出しました。フリーハンドなので、歪みはありますが、ベースなので走行に支障はありません。
最後に、両端の始末。
円弧に対して垂直になるように、カットしておきます。どちらか一方は目分量なので、あとで再度切り落とすことになります。
理論上、15度の角度で切り落とせばいいはずなんですが、そこまでこだわらなくても大丈夫。
これで、ベースの完成です。
道床とレールを固定する
次に、コルク道床にフレキシブルレールを固定します。
固定レイアウトなら、同シリーズの「24-015 釘 13mm」を使用してレイアウトのベースとなる板に線路もろとも固定してしまうんでしょうが、13mmでは、廊下に打ち付けることになるので使用できません。
とはいえ、両面テープなどでは接着面積にも制限があり、何より、見た目に目立ってしまいますから、目に見えにくいもので確実に固定したいところ。
というわけで、先ほど円弧を描く際に利用した「0.28mmの極細ステン針金」を利用します。3m50cmほどを切り落としてますから、再利用ですね。
固定用の釘穴を利用して、その隣に小さな穴を開けます。
U字型にした針金を両穴に通して、コルク道床の裏側で結びます。それだけ。
すべての釘穴に同じように固定すれば完璧なんでしょうが、試作でもあるので3つ飛ばしくらいで固定していきます(面倒だったから、というのもありますが…)。
ベースに道床を固定する
固定レイアウトのように、レール、道床、ベースとを(今回のケースでは針金で)一体的に固定してしまう、というのも一つの考え方なんですが、ベースの材質が弱いこと、それに針金がベース裏に出ると危ない(きちんと処理しないと怪我のもと)ですので、両面テープで取り付けることにします。
用意したのは、ダイソーで購入したハイパワーの両面テープ。
木材にもプラスチックにも使えるので、コルクでも大丈夫でしょう。
同時に購入したのは高さ3mmのクッションテープ。何に使用するのかというと、カーブレールのカントを出すためです。
レールの末端部分は道床の中心部分に両面テープを貼り付け。
レール中ほどの40cm分くらいには、カーブ外側にクッションテープを、カーブ内側に両面テープを貼り付けます。クッションテープは片面はテープですが、もう片方は粘着性はありません。とはいえ、内側に貼り付ける両面テープは強力ですので、全体の接着力に問題はなさそうです。
クッションテープ貼り付け時の写真を撮るのを忘れてました。。
形を整えながら、ベースにコルク道床を貼り付けていきます。
このとき、2ヶ所のジョイントレールに、ワイドPCレール(複線)を接続しておいてください。さもないと、複線間隔が違って、接続できなくなる恐れがあります。
ワイドPCレールに接続した側から、両面テープの剥離紙を剥がして、接着していきます。ベースのカーブに沿わせるように、一定の間隔を空けながら貼り付けていくと、まぁまぁいい感じに貼り付けできます。
が、未処理側のレール付近は、まだ接着しない方が良いでしょう。処理が必要ですからね。
レール末尾を仕上げる
大半径カーブといえども、終端部では、レールの長さにこれだけの差が出てきます。
計算上、外側線の外側レールに対して、内側レールは2.36mm、内側線の外側レールは9.69mm、同内側レールは12.04mmもの差が付きます。
この、外側線の外側レールを基準に、他の3本のレールをそれぞれの量だけ、カットしていきます。
KATOの商品紹介サイトにも記載されているように、
お好みの長さに合わせて金属用ニッパーなどで切断してご使用ください。
https://www.katomodels.com/product/n/flexible_track_for_permanent_layouts
とのこと。もちろん、それなりの硬度がありますが、一般的な工具で切断可能です。
ただ、専用工具ではないので、断面をスパッと切断するのは難しく、後のジョイナー接続で、若干苦労しました。
ジョイントレール S35-Jに付属のジョイナーを取り付け。
切断面が多少凸凹するので、既成のジョイナーの隙間では入りづらく、若干広げてあげる必要がありそうです。
ただ、この広げ具合が微妙で、広げすぎてしまったのか、「抜けやすい」という問題も発生してしまいました。素人加工なので、ジョイントレールとフレキシブルレールとの間の隙間をゼロにすることも難しいですしね。
多少の隙間はジョイナーがカバーしてくれますが、ベース素材が柔らかい分だけ外れやすいのは確かなようで、ちょっとベース板を反らすと簡単に外れてしまいます。
ジョイントレールは、このカーブレールのために購入したものですから、外れないようにはんだ付けしてしまってもいいかも知れないですね。
最後に、コルク道床をジョイントレールの始まり部分に、ベースをジョイントレールの終わり部分に合わせて切り落とし、道床を両面テープで固定。もちろん、この固定の際には、2本のジョイントレールにワイドPCレール(複線)を接続しておきます。
これで、完成です。
これを2組、作成しました。
試運転と成果
2組のカーブレールをS字になるように組み合わせ。よりリアリティを求めて、カーブの間に140mmの直線レールを挟んでみました。35mm×2とを足して、210mmの直線区間があることになります。
視点を落としてみてみると、こんな感じ。
上から撮った写真に比べると、明らかにカーブですよね。
内側線が半径306cmですから、1/150で換算すると、半径459m。時速110km/hまでは耐えられるカーブになります。
まず走らせてみたのは、285系サンライズエクスプレス。
思った以上にカントでの傾きが出ています。クッションテープが厚すぎましたね。
道床幅28mmに対してカント量3mmだと、6度くらいになってしまいます。でも、見た目に悪くないです。
伯備線の山間を走る感じ、ですかね。それなら、14両フル編成ではあり得ないですが。。
ただ、ちょっと気になる、というか、目立ってしまうのが、ベース+道床の厚みを乗り上げるための段差です。
このあたり、今後の改良点ですかね。
現実的には、既存のレールを、接続部に向かって徐々に上げていくのが楽な解決方法かもしれないです。
続いては、EF210-300(桃太郎)とタキ1000。
S字カーブらしさが良く出ています。
カントのおかげで、停止しているのに高速走行している感が出ているのが不思議です。
やっぱり外せないのは、ブルートレイン。EF66が牽引する24系+14系「富士」です。
せっかくの複線なので、こんな写真も。
この写真を、やや上側から撮ったのがこちら。
視点を上げると、カーブが緩やかなのがよくわかります。
視点を落として望遠で撮ると、一つ上の写真のように、結構きついカーブに見えてしまうんですね。
それでも、このC280+C317の複線カーブと比べると、大違いです。
最後に、動画をいくつか。
まずは、サンライズエクスプレスとタキ1000のすれ違いを2つの角度から。
続いては寝台特急「富士」を2つ。
既存レールとの接合部での高低差を何とかしたいのはありますが、まずは目的達成、という感じがします。
設置場所の都合上、これ以上の大半径は難しいでしょうし、見栄えのこだわりも、所詮はお座敷レイアウトなので、これくらいでいいかな、と。
バラストを敷いて固めて…、というのは本格的過ぎな感じがしますので。。
というわけで、もう少し、役立ちそうな改良が出来ましたら、また報告したいと思います。
どう見てもカント量が大きすぎる気がしたので、ほどよい高さに修正してみました。
こちらも併せてご覧ください。