片側選択式と完全選択式~TOMIXのポイント (3)【リバース線】
TOMIXの新旧ポイントの違いを紹介した記事を、昨年末に書きました。
旧式ポイントの電気的な特性を理解しておかないと、複線レール間での分岐線(ヤード)共有で思わぬ事態になる、という内容です。
今回は、その応用編となるリバース線について、書いてみたいと思います。
禁断のリバース線?
リバース線。やってみたいけど、いろいろ面倒そうで…。
と思っていましたが、ポイントの特性を理解さえすれば問題なし。
ただ、旧式(片側選択式)ポイントでは、どう考えても、レールを電気的に遮断するギャップと、本線とは別にレールにパワーを送るための追加のフィーダーが必要となります。
その理由を見ていきたいと思います。
今回、確認する線路配置はこれ。
極めて単純です。写真右側は、風船状にくるりと円を描いていて、つながっています。典型的なリバース線ですね(PL541-15のポイントにC280-15をつないで45°にしているため歪みが出ており、バリアブルレールで調整しています)。
今回も、通電方向の確認をするために、踏板型方向指示LEDを使用しています。
緑色点灯 | オレンジ色点灯 | |
本線 | 写真左から右への走行 (写真上:マイナス/下:プラス) | 写真右から左への走行 (写真上:プラス/下:マイナス) |
リバース線 (直進側) | 写真左から右への走行 (写真上:マイナス/下:プラス) | 写真右から左への走行 (写真上:プラス/下:マイナス) |
リバース線 (分岐側) | 写真左から右への走行 (写真上:マイナス/下:プラス) | 写真右から左への走行 (写真上:プラス/下:マイナス) |
わかりやすいように、いずれも、写真の左側から右側に向けての進行方向に対して、緑色を点灯させるようにしました。
実証での確認
上記写真は、現行品のポイントですが、まずは旧式(片側選択式)のポイントを使用して確認していきます。
フィーダーは、本線側にのみ設置していて、リバース線内は本線からの給電のみに頼っています。
分岐線直進側
ポイントを直進側に設定した後、写真左側から右側に向けて車両が走行するよう、パワーON。
怖いので、動力車もライト付きの車両も載せていません。。
想像通りですね。完全に異常事態です。
まずはリバースを考えずに。直進なので、こうなります。
これに加えて、片側選択式で外側の線がつながっているので、
こうなります。
次に、分岐側を考えずにリバース線がつながっていることだけを考えると、こう。
円(リバース線)の外側がプラス、内側がマイナスです。
リバース線、かつ、片側選択式の両者を考え合わせると…。
こうなりますよね。。
分岐側の内側線は本線と絶縁されているのでマイナスでは?と思ったんですが、分岐側外側線のプラスが本線マイナスと混合して、分岐直線側に入るため、結局、全部が入り乱れた状態に。
最悪の状態です。。
分岐線分岐側
今度は、ポイントを分岐側にしてみます。
方向指示LEDは、分岐側の方が明るくなりました。違いはそれだけ。
線路に色付けするまでもなく、全てが入り乱れた状態となります。
問題を解決するために
では、この問題、ポイントを完全選択式の現行商品に替えるだけで解決するのでしょうか?
分岐線直進側
交換して、まずは直進側に。
分岐側は本線からの通電がブロックされ、リバース線を介しての通電だけとなりますので、ぐるりと回って右上から分岐点に向けての通電(LEDはオレンジ色)になります。
少なくとも、リバース線内での混合は回避できています。
分岐線分岐側
次に、ポイントを分岐側に切り替えてみます。
今度は、本線も分岐側も左側から右側への通電に。リバース線内をくるりと回って、直進側線路には右から左への通電となっています。
こんな感じですね。
ポイントをどちらの方向に切り替えても、期待通りの通電となりました。
もちろん、リバース線を一周した後、そのままポイントに突っ込んだらダメですよ。
実用的に運用するために
では、実際に方向転換させるためにどうするか、というと、このようになります。
本線からリバース線へ
まずは、列車を本線からリバース線に進入させます。
分岐線側に列車が入りました。
最後尾車両がリバース線に入ったことを確認して、列車を停止させます。
停止させるので、すべての通電が止まりました。
リバース線の極性反転
ここで、パワーパックの進行方向を逆転させます。
もちろん、そのままパワーONすると、元来た通り分岐を通って本線に戻りますが、それは単なる終端駅と同じで、編成の向きはそのまま。リバース線の意味はありません。
というわけで、分岐を直進側に切り替えます。
通電していないのでわかりにくいですが。。
リバース線から本線へ
この、「パワーパックの進行方向逆転」+「ポイントの分岐切り替え」で、列車はリバース線に進入した方向のまま、走り始めます。
つまりは、客車なら、機関車を先頭にしたまま本線に戻っていく、というわけです。
これと、前の記事に書いたヤードとを組み合わせると、こういうことができますよ、と書いたのが、これ。
進行方向を保ったまま(機関車を先頭にしたまま)、複線ループの内側・外側の列車を入れ替える、という内容です。
片側選択式でのリバース線
素直に、完全選択式のポイントに替えた方がいいのでは?と思いますが、あえて片側選択式のポイントを使い続けるのなら、直進側には両ギャップレールを挟むかギャップジョイナーで隣との線路を絶縁し、分岐側は「ギャップスイッチ」をOFFにします。
写真では、スイッチが微妙に上向き加減ですが、水平の設定(ギャップスイッチON)です。この状態だと、外側のレールは常時導通、分岐側の内側レールは、ポイントが分岐側の場合は導通、直進側の時は絶縁になります。これまでの説明通りです。
が、このスイッチを分岐側線路に並行になるように少し反時計回りに回してやると(ギャップスイッチOFF)、分岐側の外側レール・内側レールともに常時絶縁状態、となります。
こうすることで、リバース線内は完全に独立した状態となります。
リバース線用のフィーダーを設置して、本線フィーダーとの極性を合わせつつ、ポイントを切り替えてやると同じような動作になりますが、やっぱり面倒ですよね。。
ちなみに、ポイントのギャップスイッチ。名前が「ギャップ」スイッチなのに、ONの時に導通して、OFFの時に絶縁となります。ネーミングが反対のような気がするのですが…。
問題はすべて解消されたのか…
と、こんな風に完全選択式のポイントを使用することで「万事解決」のように書いていますが、実は普段、このような複雑な配線はしません。
ポイントから切替器までのケーブル配線が面倒、というのがありますが、それよりも深刻なのが、ポイントでの速度低下(最悪の場合、停止)です。
長めのループ線で好きな列車を周回させて、それを眺めて楽しみたいのに、ダブルスリップポイントや通常のポイントで速度低下していては、落ち着いて楽しめないですからね。
その原因については、まだ未調査。
原因と対策(解決方法)が判れば、改めて書いてみたいと思います。