間もなく引退 381系特急「やくも」

2024年5月19日

特急「やくも」

1972(昭和47)年3月15日のダイヤ改正で、岡山-出雲市・益田間を伯備線経由で結ぶ列車としてデビューした特急「やくも」。

いや、このときの車両はキハ181系だったので、この書き出しで紹介をすると特急「やくも」自体が廃止になるように見えてしまいますでしょうか。

山陽新幹線が新大阪-岡山間で開業したと同時に、陰陽連絡特急として登場したのが「やくも」です。4往復が設定されたようですね(1往復のみが益田まで、他3往復が出雲市まで)。下り「やくも1号」と上り「やくも4号」は、全区間で10両編成での運転。グリーン車1両と食堂車を連結する、今見れば立派な、当時としては標準的な特急列車でした。

デビューから3年後の1975(昭和50)年3月のダイヤ改正で特急「やくも」は、エル特急に。ディーゼル特急としては初めての指定となりました。当時の運転本数はエル特急らしく、6往復。相変わらず、出雲市よりも西へと走るのは1往復だけだったようですけどね。

子供の頃、485系の「雷鳥」や「有明」「はつかり」、183系の「あずさ」「とき」、381系の「くろしお」「しなの」のように、エル特急と言えば電車特急というイメージが強かった中で、異色の存在として強く記憶に残っているのがキハ181系の「やくも」です。当時のエル特急は、まだ食堂車連結が多く残っていたので、その点での特別感は無かったですけどね。

エル特急「やくも」が大きく変わったのが、1982(昭和57)年7月1日のダイヤ改正。1週間前の6月23日に東北新幹線が大宮-盛岡間で開業した頃のことです。

この改正で、伯備線と山陰本線の伯耆大山-知井宮(現・西出雲)間が電化され、エル特急「やくも」が全列車、381系の電車特急になりました。このため、食堂車の連結は無くなり、益田発着の列車も出雲市発着に短縮されています。

ちなみに、それまで益田直通だった岡山15:10発の「やくも7号」。出雲市着が19:06でしたが、381系化により18:30着(増発により「やくも11号」)になるという、大幅な時間短縮となっています。が、あれ?代替の接続列車が無い。。

さすがは国鉄、という感じがしなくも無いですが、「やくも11号」の出雲市到着から約1時間後の19:24に発車する急行「石見」が、益田行きとなってますから代替列車扱いなんでしょうね。それでも、この1時間のロスは非常に大きく、「やくも7号」の益田着21:14から27分も遅い21:41に急行「石見」は益田に到着します。おまけに、急行料金は別で追加ですからね。岡山から大田市、江津、浜田、益田への直通需要は少なかった、ということなんですかね。(逆方向の益田6:00発は、同時刻に急行「石見」が設定され、出雲市もしくは米子乗り換えで、ほぼ同時刻に岡山に着く列車がありました)

話を381系に戻すと、その1982年のダイヤ改正から、あまり大きな変化はありません。全国各地で終着駅から車両基地のある近隣駅までホームライナーが設定され出した頃、1986(昭和61)年11月の改正で「やくも17号」が出雲電車区の最寄りとなる知井宮駅まで延長運転されるようになったことはちょっとしたトピックスでしょうか(米子から知井宮まで普通列車として運転)。

JR化後は1994(平成6)年12月改正で速達列車4往復が「スーパーやくも」になったり、2007(平成19)年4月からは381系のリニューアル編成(「ゆったりやくも」)が運転されたり。

エル特急指定から35年を経た2010年3月からはエル特急の表記がなくなり、特急「やくも」となりました(「スーパーやくも」の名前は、その4年前2006(平成18)年3月に全列車「やくも」と改称されて無くなっています)。

その後は増発、削減、停車駅変更などがあり、コロナ禍での列車削減もありましたが、一番の話題は2024年4月6日からの273系での運転開始、でしょうね。

もっとも、それによって、特急「やくも」としての歴史の大部分を占めた381系での運転終了が迫ってきています。

381系「やくも」も見納め

そんな中、2022(令和4)年3月からは381系にリバイバル企画第1弾として「国鉄色」の編成が登場。続いて2023(令和5)年2月からは「スーパーやくも色」、同年11月からは「緑やくも色」が登場しました。

2023年12月のJR西日本からの公式の案内として、スーパーやくも色は273系がデビューする前日の2024(令和6)年4月5日で運転を終了、国鉄色と緑やくも色も同年6月末で運行終了との発表がありました。

現時点での標準色「ゆったりやくも色」だけは、273系の補完として、置き換え後の7月以降も定期運用こそないものの存続するようですが、予定を立てて381系に乗れるのは、今年6月末までとなります。

国鉄色の381系に乗る

これまで、廃止(引退)が近いから乗りに行く、というのは積極的には行っておらず(2014年頃まで、いくつかのブルートレインに乗車したのはこれに近いかもしれませんが)、今回も静かに大阪で見送ろうと思っていたんですが、このゴールデンウイークに、山陰地方に1泊で旅行をすることになったとき、「ひょっとしたら一部区間だけでも乗れるかも」、と思ってしまったんです。

基本はドライブ旅行だったんですが、なんだかんだと鉄道の色が濃い旅行になったので、追々紹介出来たら、と思うんですが、今回は、そのうちの一部、特急「やくも24号」に出雲市から米子まで約1時間、乗車した話を書いてみたいと思います。

乗車まで

4月27日(土)の昼過ぎに出雲市駅に到着し、その日の宿泊場所である鳥取県倉吉市までの予定を考えていたのが乗車2週間前の4月13日のこと。

このとき、どうしても「やくも」に乗りたい、とは考えていなくて、「機会があれば」程度だったんですね。なんせ、振り子式381系に乗るなら、山間部のカーブが多い伯備線に乗車しないと意味がない、と思ってましたから。

なので、夕刻17:43に倉吉に着く特急「スーパーおき4号」がベストな選択かと思いながら時刻表を見ていました。

その「スーパーおき4号」の出雲市発車が16:20。紙の時刻表ですから前後列車も簡単に見られますので、左側(時間を遡る側)に目を移すと、45分前の15:35に、特急「やくも24号」のダイヤが見えました。当然、両列車とも米子には停車しますので、「やくも24号」から「スーパーおき4号」への乗り換えも可能です。

出雲市から米子まで、伯備線を含まない山陰線の区間で381系に乗車する意味はあるのか、と思ったものの、時刻表の注釈には「国鉄色リバイバル車両で運転」の文字が見えました。

「これ、きっと『乗れ』ってことだよね」と。

乗り換えなしで出雲市から倉吉まで直通の特急が走っているのに、わざわざ米子で乗り換える、ということはどう考えても特急料金が余計にかかります。

で、試算。

特急券は「eチケットレス特急券」を前提に考えていましたので、出雲市-倉吉(114.5km)の特急料金は、1,750円。

一方で、出雲市-米子(61.6km)は1,090円。米子-倉吉(52.9km)も1,090円。足しても2,180円と、430円の上乗せにしかなりません。どちらかが50kmを切っていれば、むしろ足しても安くなっていた(50kmまでは650円)、というのは驚きですが、この程度の上乗せなら問題なしです。

というわけで、「やくも24号」「スーパーおき4号」のeチケットレス特急券を、スマホから予約しました。

出雲市駅にて

出雲大社での参拝を終えて出雲市駅に戻り、出雲市駅構内にある「アトネス出雲」で島根県のお土産を購入したあと、いよいよホームへ。

「やくも24号」が発車する2番のりばからは15:20発の米子行普通列車が出るので、入線はそれ以降になるんですが、どうも遅れている様子。

改札前で待つ必要もないので、ホームに上がります。

ホーム上には浜田から到着した普通列車と、遅れている米子行普通列車が。

米子行の遅れの理由でもある岡山からの特急「やくも11号」が5分遅れで3番のりばに到着。4月6日から273系になったばかりでピカピカです。

米子行が6分ほどの遅れで出発していったあと、回送表示となった273系を撮影。

まもなく、「やくも24号」の到着です。

クモハ381の貫通扉付き先頭車は、個人的には好みではなく、先頭車なら非貫通のクハ381-100番台の方が好きです。貫通させるなら「しなの」に使用していたクハ381-0番台がいいんですけどね。もっとも、分割併合にかかる時間はかなり違うんでしょうが。

というわけで、最後尾車両となるクロ381-100側に陣取ってましたので、クモハ381の写真はなく、上に挙げた動画の中だけです。

国鉄色と言えば、やっぱりこれ。日本国有鉄道、JNRのマークです。

上下逆さまに貼り付けられたことで一時話題になりましたが、確かによく見るとRは半円のカーブで、Jは角ばってたんですね。

列車名・行先表示は2色LEDです。

走る381系(出雲市-米子)

先行列車が遅れていたからか、それとも平時からそうなのか、入線が15時28分頃でしたので、あまりホーム上でゆっくりもしていられず、車内へと入りました。

座席表から指定して予約した席は、2号車8番C・D席。

2席分で一つの窓となりますので、その後ろ側、車窓がよく見える側です。

座ってしまったのでC・D席ではなく、通路反対側の8番A・B席の写真です。

結局、山陰線内の各列車の遅れに引きずられて3分の遅れで15時38分に発車。

映像前半、駅ホームを出発するところは、車内での我々の話し声が大きすぎたので音声をカット。車内放送が始まったところから音声を入れてます。

オルゴールの鉄道唱歌。懐かしいですね。

出雲市を出て斐伊川を渡った直後に緩い左カーブがありますが、確か、このあたりで撮影したのがこれ。

液晶とカバーの間に埃が入っていて見えにくいんですが、66°の方角に112km/hで走っています。思っていた以上に高速です。

出雲市を出て次の駅、直江で対向列車の特急「スーパーおき5号」との行き違いのために停車。そのあと、右・左と続くS字カーブを走ります。

右カーブ、左カーブがよく判る傾きだと思います。

ところで、出雲市-米子間って、振子式の制御は稼働してるんですよね。今さらですが…。

鳥取と出雲市の間の最高速度は100km/hで、振り子制御車両が120km/hですから、110km/h以上で豪快に飛ばしてますので制御が効いている、ということでしょう。きっと。

宍道に停車し、宍道湖が見え始める直前のカーブ。

今度は、手持ちのコンデジでの撮影です。

右に左にとカーブする様子が判ります。

せっかくなので、宍道湖の映像を。

玉造温泉と乃木の間の緩やかなカーブ走行中の車窓です。

その後、松江に停車して、宍道湖と中海をつなぐ大橋川沿いを走ります。

これは、東松江の手前での大橋川に浮かぶ、手間天神社のある小島です。奥に中海大橋が見えます。

山陰本線からは中海はちらちらとは見えるものの、湖岸を走るのは、揖屋と荒島の間の一瞬だけですね。

というわけで、米子に到着。16:33でしたので、出雲市を出てからの遅れはほぼそのままでした。単線区間が続くと、挽回は難しい、ということでしょうね。

そんなわけで、米子での停車時間はごくわずかに。

「ゆったりやくも色」の「やくも15号」も定刻16:28発ですから、5分以上の遅れのようです。

停車時間を縮めて16:34、定刻で米子駅を発車する「やくも24号」の姿です。

おまけで「やくも15号」も撮っておきました。

というわけで、出雲市から米子まで、1時間ほどの乗車でしたが、思い出に残る「やくも」の旅となりました。