14系14形 寝台特急「ゆうづる」

ここ数ヶ月、TOMIXの「国鉄 14系14形特急寝台客車(さくら)基本/増結セット」や、KATOの「寝台特急「さくら・はやぶさ/富士」 24系 9両セット/14系 6両セット」を購入したこともあって、「さくら」「富士」「はやぶさ」「出雲」「紀伊」など、西日本を走る夜行列車の話が多くなっていました。

8月に入り、暑さも厳しくなる中、北へ向かう列車を走らせたら気分的にも涼を取れるのでは?と、考えた結果、選んだのが、上野発の夜行列車、寝台特急「ゆうづる」です。

終着駅の青森は、ちょうど「ねぶた」で盛り上がってますからね。こちらは涼ではなく、熱気ですが。。

寝台特急「ゆうづる」小史

「ゆうづる」は、1965(昭和40)年に運転を開始した、上野-青森間を常磐線経由で結ぶ寝台特急列車です。

登場時は20系。カニ21を含む13両での運転で、平(現いわき)-仙台間を蒸気機関車のC62が牽いたことで話題になっていたようですね。1967(昭和42)年に常磐線が全線電化され、平から盛岡まで、ED75による通し牽引になったそうです。盛岡以北は登場時からDD51が重連で牽引だったそうで、DD51好きとしては、いつかは再現させてみたい編成ですね。

登場から3年後の1968(昭和43)年10月のいわゆるヨンサントオ改正では、東北本線全線電化に伴い、583系での増発があり、20系との2往復に。この改正から、水戸(一部は平)以北はED75が青森まで牽引、というのが最後まで続いたようです。

1970(昭和45)年10月、1972(昭和47)年3月と、583系での増発を重ねて、583系3往復、20系1往復の4往復に。同年10月には20系での増発があり、5往復になっています。

3年後の1975(昭和50)年3月改正では20系2往復が増えて、583系3往復、20系4往復という大所帯に。当時は上り下りで各1号から始まる名称でしたので、上下ともに「ゆうづる1号」から「ゆうづる7号」が、毎夜上野と青森から発車していた、という時代でした。

翌1976(昭和51)年10月の改正で、20系4往復がすべて24系(24形)に置き換えられています。

1978(昭和53)年10月の改正で、24系のうち1往復が14系に置き換えられました。この改正で列車の名称が下り奇数、上り偶数となりましたので、「ゆうづる1号」から「ゆうづる14号」という、いかにも大所帯な寝台特急となっています。東北新幹線開業の4年前。北東北・北海道への鉄道輸送の要を担っていた時代ということですね。

今回走らせてみたのは、この14系で運転されていた「ゆうづる9号(8号)」になります。

その後、1980(昭和55)年10月改正で14系と583系の1往復が季節列車へと格下げとなり、定期列車は5往復となります。同時に24系のうち2往復が24系25形にと置き換わりました。ですので、1975~1980年の5年間が定期7往復という最盛期だったということですね。

2004年10月 終着駅熊本に着いた24系25形「なは」の回送幕移行途中の1シーン…

東北新幹線が大宮-盛岡間で開通する1982(昭和57)年には、客車は24系と24系25形の2往復のみとなり、季節列車からも14系が姿を消しました。

1985(昭和60)年には583系、24系、24系25形が各1往復という3往復にまで縮小。

翌1986(昭和61)年11月改正で24系25形1往復が季節列車になり、このまま衰退かと思いきや、翌1987(昭和62)年3月の改正で24系25形化された上にオロネ25-500(ツインデラックス)が連結されました。最期の花、ですかね。

客車の「ゆうづる」は、翌1988(昭和63)年3月改正で誕生した「北斗星」にバトンを渡す形で廃止となり、残った583系2往復も、1993(平成5)年12月の改正で臨時列車に格下げとなって、定期列車としての「ゆうづる」は28年の幕を閉じました。

14系「ゆうづる」

「ゆうづる」の車両と言えば…、と聞かれたら、583系か、24系か、と答えるでしょうか。

24系(24形)、欲しいんですけどね。鉄道模型趣味を再開して約2年、14系15形、24系25形、14系14形と、新製品や再生産で購入できたんですが、24系24形は、まだ。(今年の12月くらいにKATOから24系「日本海」の再生産があるようですが、25形の金帯が混じった晩年の姿ですね。白帯で統一された純粋な24系編成が欲しいんですが…、といいながら、買っちゃうんでしょうけどね)

それはともかく、7往復のうちの1往復、しかも定期列車としてはわずか2年という短命だった異色の14系「ゆうづる」を、国鉄時代のTOMIX14系で走らせてみたいと思います。

トレインマークを「ゆうづる」に

ベースにするのは、上にも書いた通り、「国鉄 14系14形特急寝台客車(さくら)基本/増結セット」です。

このセット、計4両あるスハネフ14のトレインマークは、当然ながら「さくら」が装着されています。が、ありがたいことに、前面窓ガラスとトレインマークのシールが付属品として用意されています。

https://try-widely.com/limited-exp-izumo-kii/ より再掲

基本・増結セットで、合わせて4個の前面窓ガラスがあるわけですが、そのうち2つは「出雲」「紀伊」で使用済み。

残る2つのうち、1つを「ゆうづる」に充ててみました。

トレインマークのシールを切り抜き、窓ガラスの所定部分に位置合わせ。イラスト正面に糊が付いていますので、貼るときは見えにくい裏側から。

真正面から見て、ベストな位置に調整しましょう。窓ガラス分の厚みがありますから、斜めから見ると違和感があるのですが、それは仕方ないですね。

床下ユニットからボディを外し、両側の側面窓ガラス、テールライト、前面窓ガラスの順に外します。

「ゆうづる」の前面窓ガラスを取り付け、テールライト、側面窓ガラスの順に付けていきます。

慣れればどうってことないんでしょうが、意外と面倒。それでも、新しい「顔」が出来る喜びの方が上回ります。

というわけで、床下ユニットにボディを装着して出来上がり。

今回も『RM MODELS 6月号(No.333)』の特別付録「映える撮影用背景紙」を使用させて頂いています。

斜めから見ると右に寄っている感じがしますが、正面から見るとこの通り。

いい感じです。

ところで、当たり前のようにイラストのトレインマークを使用していますが、時代的には微妙なタイミングでした。寝台特急にイラストが使用され始めたのは、1979(昭和54)年7月から。

ですので、14系「ゆうづる」登場時は「文字のみ」だった、ということになります。

「ゆうづる9号(8号)」の編成

14系を使用していた「ゆうづる9号」と、その対をなす「ゆうづる8号」。両端部がスハネフ14だということは当然として、どのような編成だったかというと、こんな感じです。

寝台特急「ゆうづる9・8号」

1978(昭和53)年10月~1980(昭和60)年10月

←5018ㇾ 上野

7ㇾ 青森→

123456789101112
スハネフ14オロネ14オハネ14オハネ14オハネ14スハネフ14スハネフ14オハネ14オハネ14オハネ14オハネ14スハネフ14
B寝台A寝台B寝台B寝台B寝台B寝台B寝台B寝台B寝台B寝台B寝台B寝台

「国鉄 14系14形特急寝台客車(さくら)基本/増結セット」の基本セットからオシ14とオハネ14のうち1両、計2両を抜いただけですね。特に番台による違いもないので、気軽に組成できると思います。

オハネ14、オロネ14の客車の乗降ドアは、北(青森)寄りにありますから、東北の下りは東海道の上りと同じと考えればよいと思います。

ちなみに、この編成、他の24系が盛アオ(青森運転所)なのに対して北オク(尾久客車区)所属で、「北星」「北陸」との共通運用でした。

「あかつき」が14系15形に置き換わることで、門ハイ(早岐客貨車区)から転属されて14系「ゆうづる」が誕生したそうですから、関西(大阪)にもゆかりのある車両だったということですね。

「ゆうづる」の牽引機

先述の通り、水戸(一部は平)から青森まではED75による牽引で、上野から水戸(平)までは、登場時からEF80。

晩年の1985(昭和60)年以降は同区間をEF81による牽引となったそうですが、「はくつる」や「北斗星」のように青森までEF81が牽引、ということはなかったようです。

それと、残念ながらというのか、1975(昭和50)年3月を最後に、東京発の九州方面ブルートレイン以外はヘッドマークの取り付けが省略されてしまいましたので、全国的に復活する1984(昭和59)年10月までの間、EF80にもED75にもヘッドマークは取り付けられていませんでした。

14系「ゆうづる」は、季節列車としての期間を含めても、ちょうどこのヘッドマーク無し時代での運転でしたので、ヘッドマークはありません。

というわけで、手持ちのED75に、特に準備は無し…と思ったんですが、KATOのED75(ナックルカプラー)に、TOMIXのTNカプラー車の連結になりますから、ちょっと加工。

そういえば、これまで東北を走らせた列車と言えば、「八甲田」くらいでしたから、スハフ12もスニ41もKATOなので、TNカプラー対応はしてなかったんですよね。

ナックルカプラーの出っ張り部分を切り落とし、0.5mmのピンバイスで穴を掘り、0.8mmで入口部分の穴を拡げます。削った部分の粗さは残ってしまいましたが、穴はきれいに仕上がりました。

加工前
加工後

これで、走らせる準備がすべて整いました。

動画と写真

まずは、駅を通過する様子から。

先述の通り、オロネ14が後ろから2両目となるのが、下り「ゆうづる9号」です。

東海道ブルートレインの「さくら」「みずほ」や「出雲3/2号・紀伊」より2両少ないとはいえ、貫禄のある姿です。これだけの客車が毎夜7往復(583系はサシ581を含めて13両、24系はカニ/カヤを含めて12両)走っていたわけですから、相当な流動があったということですよね。

続いては、カーブの走行シーン。

まずは、前面から。

テールのトレインマークが見えないので、「北星」としても通用しますね。

「北星」は東北本線経由の上野-盛岡間の寝台特急。上野-黒磯間はEF65-1000が、黒磯-盛岡間はED75が牽引していました。

続いては、インカーブで後方から。

トレインマークははっきりとは映っていないですが、赤いので「ゆうづる」です。「出雲」ではないです。。

動画の最後は、再度、駅での撮影です。

続いては、写真を何枚か。

ED75を先頭に、発車を待つ様子です。

次に、A寝台、オロネ14。

車両上部の小窓が特徴的ですよね。

私自身、開放式のA寝台は一度も乗車したことが無く、上段ベッドからの窓越しの風景がどのように見えたのかは知らずじまいです。

スハネフ14と「ゆうづる」のトレインマーク。

列車名に黄色が入る「出雲」とはちょっと印象が違いますね。

なかなか全体にピントを合わせるのは難しいのですが、下の方が14系らしさが出てるでしょうか。構図的には上の方が好きですけどね。

最後はテールから。

こうしてみると、24系(白帯)編成の「ゆうづる」も見てみたくなります。今年末に金帯車両入りの24系「日本海」がKATOから再生産されるようですが、TOMIXあたりから24系「ゆうづる」、出してくれないですかね。。

「ゆうづる」といえば…

最後に余談ですが、関西人の私が、関西とは縁のない「ゆうづる」に興味を惹かれるのは、子供時代(最もブルートレインに興味を持った時代)に、季節列車を含めて7往復という圧倒的な存在感があったからでしょうか。

西村京太郎氏の推理小説、「終着駅ターミナル殺人事件」(光文社 1980年刊行)の印象も強く残っています。

上野駅を出る「ゆうづる7号」から始まるこの小説は、先に土曜ワイド劇場で1981年にドラマ化されたものを見てしまったかもしれないですが、電車・客車で7往復ある「ゆうづる」らしさが出ていたと思います。

それだけに、2013年(「ゆうづる」廃止から20年経過)に、テレビ朝日開局55周年記念企画としてリメイクされた「終着駅殺人事件」を見て、愕然としましたね。「あけぼの」かよ、って(笑)

それと、もうひとつ。

島田荘司氏の「北の夕鶴2/3の殺人」(光文社 1985年刊行)。タイトルこそ漢字ですが、上野駅を発つ「ゆうづる9号」から始まります。奇想天外なトリックで(列車ダイヤのトリックではないですが)、今でも印象に残っている作品です。

1985年の作品なので「ゆうづる9号」も24系の時代だったんでしょうが、また読み返してみたいですね。

【参考】寝台特急「ゆうづる」「はくつる」「北星」時刻表

14系「ゆうづる9号」が定期列車として走っていた1978(昭和53)年10月改正の時刻表を挙げておきます。

【下り】

5013M13M15M5M5007317501717
1号3号5号はくつる7号北星9号11号13号
上野195019532140222121532234221623002305
大宮||||||||2300||||||
||||||||2301||||||
宇都宮||||||2348||003||||||
||||||2350||004||||||
水戸211121172308||2327||2349033046
211321192312||2336||2358042055
22232230022||||
22252232025||||
仙台028035
030037
一ノ関453502512539546
455504514541548
水沢523608
北上538623
538623
花巻537550
538550
盛岡442453605617621653700
444455607623655702
一戸717801
北福岡705756
三戸735820
八戸559607733754827837
601609735755829839
三沢753814847857
野辺地836910
836910
青森503508705711851915950955
5257309501015
函館915112013401405
号数のみ表記は「ゆうづる」
青森-函館間の時刻は接続する青函連絡船

【上り】

850081832501814M5014M16M6M
2号4号6号北星8号10号12号14号はくつる
函館14401505170019251950
青森18301855205023152340
18501854191519202110211523352358
野辺地19281954
19281955
三沢19461953201120192202
八戸200320102028203722112219036103
200520122030203922132221038105
三戸20472055
北福岡21022238
一戸20452115
盛岡21192137220723272334
2131213922002212220923292336
花巻21582238
21592239
北上22142250
22152250
水沢22292304
一ノ関22402248230723232314
22422250230923252316
仙台2357005
2359007
||338355555||
||344357557||
水戸356409||456506706||
400417||500510711||
福島||||||||||||||546
||||||||||||||548
郡山||||||||||||||623
||||||||||||||625
宇都宮||||||422||||||||752
||||||424||||||||754
大宮||||||534||||||||
||||||534||||||||
上野524538600600608635652901918
号数のみ表記は「ゆうづる」
函館-青森間の時刻は接続する青函連絡船