お座敷レイアウトにフレキシブルレール(1)
休日に走らせるときだけレールを敷く、いわゆるお座敷レイアウトで鉄道模型を楽しんでいますが、そこにフレキシブルレールを組み込んでみたい、というテーマとなります。
今回は、1回目として、「とりあえず楽しむ」ところまで。「楽しめたら、それがゴールじゃないの?」というのは置いといて…。
ことの発端と目的
鉄道模型車両は、KATO製、TOMIX製、マイクロエース製と複数メーカーのものを所有していますが、レールはTOMIX製のみ。これは、中学生時代に初めて手にした基本セットがTOMIXのものだったから。それだけの理由です。最初がKATOなら、恐らくKATOの線路を増やし続けていたんだと思います。
TOMIXの場合、カーブの基本は半径280mm。複線構築用に複線間隔である37mmを広げた半径317mmのものがあります。さらに複々線用にと、半径354mm、391mmが製品化されています。このあたりがいわゆる標準構成のカーブ半径でしょうか。
半径391mmというと、Nゲージのスケールを1/150として、およそ半径59m。280mmだと半径42m。
現実の話では、関西では阪急伊丹線の塚口駅付近の急カーブがR60(C391のカーブとほぼ同じ)だとのことですが、もちろんのこと最徐行。駅付近ということもあり、事情は異なりますが、このカーブを特急列車が時速100km相当で通過することなどあり得ない話です。
そのため、TOMIXでは、さらに半径の大きい428mm、465mm、502mm、539mmという高架橋専用のカーブを製品化しています。地上用のレールではありませんので、新幹線用に、ということでしょうね。
とはいえ、最大の539mmだとしても、半径80mです。(新幹線なので1/160としても半径86m)
東北新幹線には仙台駅付近の本線上に半径500mのカーブがありますが、仙台駅は全列車が停車しますし、この区間を200km/hオーバーで走る列車はありません。
何より、それでも500mと80mという大きな開きがあります。そこが、リアルな世界と鉄道模型の大きな違いです。
このギャップを少しだけ埋めてくれるのが、「築堤大カーブS字レールセット」でしょうか。
これまでのTOMIX製レールには無かった半径1641mmのカーブレールがセットになっています。
通常のレールとは異なり、築堤がセットになった「大半径S字カーブ」を楽しむためのものです。長編成の列車が通過する写真を見ると、結構リアルに感じますよね。
この1641mmは、換算すると半径246m。
本線上に半径250mのカーブを作ると、その区間の設計最高速度は70km/h超~90km/h以下(考え方は逆ですね。設計最高速度を90km/hとするなら、半径250m以上としなければならない)とのことですから、S字カーブを走る在来線特急列車なら、それなりにリアルな感じで見られそうです。
S字カーブの走行を楽しむなら、なかなかいい製品のような気がします。
…が。
高い…。
S字カーブの走行を、やや下から見上げるような視線を楽しめるとはいえ、前提の築堤はもちろんのこと、架線柱や機器箱など、通常のレールには無い付属品もあったりして、定価で9,350円になります。
それに、単線を想定した築堤ですから、複線化するにはかなりの工夫が必要になりそうです。二つの築堤を並べて複線化するにしても、築堤大カーブレール(延長部)を追加で購入すると、さらに 7,590円 が必要になりますからね。
レール部分だけ、道床付きのワイドレールとして単品で販売してもらえないものでしょうか。。
と、ここまでが前振りです。
要は、安価で「よりリアルな」S字カーブを実現できないものか、と。
そんなことを考えていたときに、フレキシブルレールの存在を思い出したんです。
KATO 21-000 フレキシブル線路 808mm
当然ながらKATOのサイトでも「固定式レイアウト用線路」として紹介されているフレキシブルレール。
お座敷レイアウトに組み込むには無理があるなぁ、と敬遠していたんですが、ちょっと試してみるのも面白いかな、と購入してみました。
まとめ買いがお得かな、と、フレキシブル線路 808mm の10本セットと、コルク道床 900mm の10本セットを購入。(それなりの額になりますが、築堤のセットよりは安いはず…)
どんな箱で届くのかと思ったら、
長さが130cmもある長い箱。
梱包を解くと、二つの箱が現れました。
さっそく1本取り出してみます。
人生初のフレキシブルレールです(笑)
まずやってみたのが、ぐいっとカーブの作成。写真は無いですが、固いはずのレールが簡単に曲がるのが不思議です。ただ、元に戻ろう(真っすぐになろう)とする力が働きますので、固定レイアウトのように、レールを釘止めしないと思い通りの形に仕上げるのは難しいかもしれないですね。
今回、やってみようと考えているのは、この80cmのフレキシブルレールを2本つなげてのS字カーブ。
もちろん、保有しているレールは、このフレキシブルレール以外は全てTOMIX製ですから、何らかの方法でTOMIXのレールと、このフレキシブルレールを接続する必要があります。
固定レイアウトならば何とでもなりそうな感じがするんですが、敷設&撤収を繰り返すお座敷レイアウトですから、接続と切り離しを容易にする必要があります。
そのために便利なのが、これ。TOMIXの 1529「ジョイントレール S35-J」です。
TOMIX 1529 ジョイントレール S35-J
写真には2本しかありませんが、この35mmのレールが4本入っています。
他にジョイナー9個、プラジョイント4個、ジョイナー交換治具がセットになっています。
片側は、普通のTOMIXレールと同様、一方にプラジョイントと、ジョイナーが取り付けられていますが、反対側はどちらもありません。
ジョイナーがあれば、つながりそうな雰囲気ですね。(…というか、つながります)
なので、付属品のジョイナーを取り付けます。
まずはジョイントレールにジョイナーを取り付けます。
付属の取り付け治具に、ジョイナーを挿します。裏側に突起が付いている方を、先側に。そのままレールに取り付け。グイっと押し込むと、カチッという感触があって、裏側の突起が穴に収まります。
このレールは、フレキシブルレール取付の専用にしますから、通常のTOMIXレールではあり得ない、左右両側にジョイントを付けます。
このようにフレキシブルレールと接続することができました。
結構しっかりと接続されています。
フレキシブルレール2本をつないで長さ160cmほどの複線S字カーブを作成しますので、これを4組用意します。
ところで、なぜS字カーブなのか、というと、単なる見栄えの問題ではなく、重大な理由があります。
それは、まず第1弾として、フレキシブルレールを切断せずに試してみたかったから。
実際に実物に触れてみて、当然のことながら改めて気づかされたんですが、S字ではなく1方向のカーブ(ただの円弧)だと、内側と外側のレールの長さが違ってくるんです。
写真には撮ってないんですが、外側レールに比べて数ミリ単位で内側レールの方が長くなります。
円周の長さを求める式を考えてみれば明らか。外側レールの方が、線路幅の分だけ半径が長くなりますからね。
カーブ半径が急になればなるほど差分が膨らみます。
これは、複線の考え方でも同じ。
カーブの内側線と外側線とで、レールの長さが変わります。なので、カーブ外側線の外側レールと内側線の内側レールとで、線路幅+複線間隔分の差が生じます。
ところが、同じ角度のカーブレールを、逆向きに組み合わせると、その差分が全て相殺されます。
なので、点対称のS字カーブを作れば、各レールでのジョイント位置はズレるものの、フレキシブルレールのレールそのものをカットしなくてもきちんと両端が揃います(もちろん、両端がきちんと平行の場合)。
ジョイントレールのセットには、付属品としてジョイナーが9個(予備が1個)入っていますが、これだけでは、フレキシブルレールどうしをつなげることが出来ません。
そこで追加購入したのが、0110「ジョイナー(ファイントラック用・20個入)」。
でも、ジョイントレールに付属のジョイナーと、大きさが違うんですね。予想外でした。
写真上側が「ジョイナー(ファイントラック用・20個入)」の方。下側がジョイントレール付属品。もちろん、機能も役割も同じですので、どちらでも使用可能です。
もっとも、フレキシブルレールどうしの接続のためなので、KATOのジョイントを使うのが正しい姿なのかもしれませんね。。
コルク道床を下敷きに
本来は、フレキシブルレールの曲線に沿って、コルク道床も曲げて固定するものなのですが、フレキシブルレールほど、柔軟には曲がってくれません。固定レイアウトで、完全に固定させる使い方になります。
とはいえ、せっかくなのでフレキシブルレールの下敷きに使ってみました。
コルク道床を敷くと、接続したTOMIXレールの道床がやや浮きますが(コルク道床も床面に密着してないのですが…)、コルク道床を敷いた方がいいですね。
フレキシブルレール(正確にはジョイントレール)の前後には、複線で固定させたワイドレール。フレキシブルレールの途中で複線間隔が一部狭まったり広がったりしてますが、固定してないですからね。指で押さえると簡単に線形が変わります。
フレキシブルレール部分だけで、全長がおよそ160cm。
S字カーブが入口側出口側ともに同じ型(点対称)だと仮定してですが、計算上、半径がおよそ290cm、角度が16度となりました。実物の換算で、半径435mですから、100km/h近くで走行できるカーブになります。
これでも、視線を落として一方から見るとこんな感じに見えます。
コルク道床はカットしていませんので、長さは90cmです。幅は1本が28mmですので、5本で14cmほどですね。望遠で撮影していますので、そういう縮尺です。
では、実際に列車を走らせてみましょう。
車両とともに
まずは、EF65+24系「出雲」。ヘッドマーク付け忘れです。
暗かったので、色合いを補正しています。
EF65がフレキシブルレールからジョイントレールに移るまでの間、要はフレキシブルレール走行中の静けさをよく感じられると思います。
既成のカーブレールでは出せない「編成のしなり」が楽しめます。
続いては、EF58+14系「出雲・紀伊」。
直線を走っているかのような感じですが、半径およそ3mのカーブ走行中です。
動画の最後はDD51+14系「出雲」。
カーブのアウトサイドですが車両と車両の間の妻面は見えず、本当にカーブなの?という気もします。
それだとフレキシブルレールまで買った意味が無いんですが。。
最後に写真を何枚か。
編成が緩やかにカーブしているのが判ります。
上から見下ろすとこんな感じ。
ちなみに、通常はポイント付近で島式ホームの幅を作ったりするC541でのカーブも、同じように上から撮影すると、
こんな風に、急カーブに見えます。
C280だと、レールの軋み音が悲鳴のように聞こえそうな急カーブです。
2両先の車両の向きが90度違うのは、やっぱり急すぎです。
これくらいだと自然に近いですよね。
こちらは、インカーブから。
直線とは一味違う写真です。
S字カーブらしい写真を撮ろうとしても、全体にピントが合わせるのが難しいんですよね。ですので、雰囲気を味わう写真になりました。
というわけで、お座敷レイアウトにフレキシブルレールを挟み込んで楽しんだというお話でした。
冒頭に書きましたが、今回は1回目。
次回以降、工作が必要なのでいつ実施できるかは未定ですが、もう少しきちんと道床の加工をして、お座敷レイアウトに組み込みやすい形状に作り込んでいきたいと考えています。
その「お座敷レイアウトに組み込みやすい形状」にチャレンジしたのが、こちらになります。
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